地方自治体の魅力を最大限に引き出し観光客を増やすことは、地域の活性化や産業振興につながるとともに、地域住民にとっても大きなメリットがあります。
しかし、自治体における旅行客誘致は簡単ではありません。
多くの自治体が同じような施策をおこなっている中、どのようにすれば独自性を出し、旅行客を増やせるのでしょうか。
今回の記事では、自治体の旅行客誘致における課題と成功事例を紹介しながら、ターゲティング選定の重要性について解説します。
また、来訪目的や時期ごとの訴求、位置情報を活用したターゲティング広告など、効果的な誘客施策についても紹介します。
本記事は、自治体の魅力を最大限に引き出し、訪れる人々にとって心に残る旅行体験を提供するためのヒントが満載です。
自治体観光に興味のある方はもちろん、自治体の課題解決に役立つ情報をお探しの方も、ぜひご覧ください。
自治体への旅行客誘致を成功させるために、まずは課題を明確にしていきましょう。
自治体が抱える誘客の課題を詳しく解説します。
自治体の観光情報は、観光客にとっては必要不可欠です。
その情報は、交通手段・宿泊施設・飲食店などの基本的な情報はもちろん、観光スポットの詳細や地域の歴史文化に関するものまで多岐にわたります。
しかし自治体は、ただ情報を提供するだけでは不十分です。旅行者がより深く地域を知り、その魅力を感じられるようなストーリー性を持ったコンテンツを提供することが重要になります。
自治体の観光情報は、ほかの自治体との競合が激しく、上位表示させるためには対策が必要となります。それには、検索エンジン最適化(SEO)が不可欠です。
SEOとは、特定のキーワードの検索結果において上位表示させるための対策を、Webサイトに対して施すことです。
そのためには、キーワードの選定やWebサイトの構造の見直し、コンテンツの高品質化などが重要となります。
もちろんそれだけでは不十分で、SNSや口コミなどを活用して、自治体の魅力を積極的に発信することも大切です。
自治体への観光客誘致には、旅行者の動向を正確に把握することが重要です。
そのためには、正確なデータ収集と分析が求められます。
なぜなら、旅行者が訪れる理由と地域の特性のマッチングを正確に把握できれば、魅力的なコンテンツの提供や観光施設の整備を具体的に検討できるからです。
また、データ収集と分析によってターゲティングの精度が上がるため、より効果的なマーケティング施策の展開が可能となります。
多くの人々が情報収集やコミュニケーションにSNSを利用しています。それゆえ、自治体の観光情報の発信にもSNSの活用はとても有効です。しかし、SNSで情報を発信してもコンテンツの質や更新頻度が低いとフォロワー数も伸びず、ターゲット層にうまくアプローチできません。
旅行者が知りたい情報や現地の魅力を伝えるストーリー性のあるコンテンツをSNSで発信し、リピーターやファンを獲得しましょう。
日本の観光業界は、外国人旅行者の増加に伴い、多言語対応が不可欠な時代に入りました。
それゆえ自治体には、多言語対応のサイトやコンテンツの充実が求められています。英語や中国語、韓国語など、多くの国や地域に対応した翻訳が必要です。
また、コンテンツを利用する外国人旅行者にとって、日本の文化や習慣に関する情報が不足している場合も少なくありません。
そのため、観光情報の発信に加えて、異文化理解を促すコンテンツの充実が求められます。多言語対応のサイトやコンテンツを充実させ、外国人旅行者の利用を増やしましょう。
自治体が抱える誘客施策の課題を解決するキーワードとして、顧客像の ”ターゲティング” 選定が挙げられます。効果的な旅行客誘致のために、ここからはターゲティングの重要性を解説します。
1つの自治体の中でも、来訪時期や目的によって旅行客の需要は変動します。
これは、自治体の観光政策において、とても重要なポイントの1つです。
需要を正確に調査・分析して、ターゲット層を絞り込むことができれば、リソースを効率的に分配できるからです。
旅行客誘致のために、まずは市場分析とターゲティング選定に力を入れましょう。
自治体による観光振興では、誘客したいターゲット層に応じた適切な広告媒体やプロモーション手法の選択が重要です。
例えば、若年層に向けたプロモーションでは、SNSを中心としたデジタル広告や体験型のイベントやインフルエンサーマーケティングなどが効果的です。
一方、高齢者に向けたプロモーションでは、地元の新聞やラジオなどの伝統的な媒体や旅行会社との提携によるツアー商品などが有効でしょう。
また、訪日外国人に対しては、例えば海外メディアや旅行会社と提携するのも有効な手段として考えられます。日本旅行を計画する旅行者をターゲットに、自治体の魅力が広く知られるためのプロモーションをおこないましょう。
自治体の旅行客誘致の課題の1つに、広告にかけられるコストが限られている点が挙げられます。例えば企業の新商品発売時のように、大々的な施策を打つことは難しい場合が多いのではないでしょうか。
限られた予算の中で広告効果を最大化するには、ターゲットの絞り込みが必須です。
ターゲット層に適した情報やコンテンツを提供することによって、興味を持ったユーザーのコンバージョン率が高くなります。
適切なターゲティングをおこない、無駄な広告費用を削減できれば、自治体にとってより効果的な誘客が実現できます。
次に、自治体の旅行客誘致を成功させるための具体的な訴求の一例を紹介します。まずは来訪目的ごとの訴求の例をご覧ください。
3.11 キャンプ
自然の中でキャンプを楽しみたい方に向けた訴求では、キャンプ場情報や周辺の自然環境、グルメ情報の提供などが考えられます。また、キャンプ場だけでなく、道具を用意しなくても気軽にキャンプを楽しめるグランピング施設も紹介して、幅広いニーズに対応できるようにしましょう。
3.12 登山やトレッキング
高い山々や美しい自然環境が豊富な地域では、登山やトレッキング愛好家に向けたPRが有効です。主にハイキングやトレッキングの情報を提供し、愛好家に訴求できます。地元のガイドや山小屋などの情報提供もおこなうと、より充実した体験を旅行者に提案できます。
3.13 釣り
釣り目的で旅行を楽しみたい層には、美しい渓谷や釣りスポットなどを紹介し、釣りの情報を提供すると効果的です。また、釣り初心者の方も安心できるように、現地での釣り体験プランを提供すれば、より充実した旅行を体験してもらえるでしょう。
旅行でグルメを楽しみたい方のニーズは、次のようなものが挙げられます。
こうしたニーズに応えるための、訴求の具体例をそれぞれ考えてみましょう。
3.21 地元特産品や名物料理
自治体の有名な料理や食材を、地元の料理人や飲食店経営者のインタビューを交えて紹介し、地元ならではの美味しい食事が楽しめることをPRしましょう。また、その料理を堪能できるグルメツアーやフェスタなどのイベントも誘客には効果的です。
3.22 地元のお酒
地元で醸造されたワインやビールなどのお酒を、地元醸造家やバー・居酒屋のオーナーと共に紹介し、地元のお酒を魅力的にアピールしましょう。ワイナリーや醸造所を訪れるツアーや、飲み比べイベントなどの企画も有効です。
これらの情報を包括するような食べ歩きマップの提供も効果的なPRになるでしょう。地元食材を使った料理を提供する飲食店の情報をまとめることも大切です。
文化や歴史を体験したい方々は、史跡や文化施設、伝統工芸品などに興味を持っています。
それぞれのニーズに訴求する具体例を考えてみましょう。
3.31 世界遺産や文化遺産
自治体が保有する世界遺産や文化財を中心にした観光スポットを紹介し、歴史や文化に興味を持つ方々へPRしましょう。さらに、現地ガイドによる解説や体験プログラムなど、深い知識を得たり普段できない体験ができるプランを提供できれば、より魅力的な旅行体験となり得ます。
3.32 地元の文化や伝統芸能
地元の文化や伝統芸能を体験できるプログラムを用意し、文化に触れ新しい発見を得たい方に訴求しましょう。例えば、地元のお祭りや伝統工芸品作りなどの体験プランを提案することはとても効果的なPRです。
3.33 美術館や博物館
自治体にある美術館や博物館を紹介し、芸術や歴史に興味を持つ方をターゲットにします。展示品やコレクションに特化したオーディオガイドや、特別な展示会やイベントなどを紹介し、芸術や歴史が好きな方にとって魅力的な情報を提供しましょう。
季節によって旅行の目的やニーズは変わります。ここからは、時期ごとのニーズに応じた訴求の具体例を紹介します。
春は、桜やチューリップなど、花や自然を楽しむ需要が増える季節です。自然公園や植物園、山や湖などの自然スポット情報を発信し、旅行客を誘致しましょう。お花見等の季節限定のイベントや体験プログラムの開催も有効です。
公式WebサイトやSNSでフォトジェニックなスポットを紹介し、地域の魅力を発信しましょう。
夏は、海やプール、イベントなどを楽しむ旅行客が増える季節です。家族や友人と一緒に楽しめるスポットやイベントをアピールして、旅行客を誘致しましょう。
例えば、海水浴場やプール施設のプロモーション、あるいは、地域特有の夏祭りや花火大会等のイベント情報が誘客には有効です。公式ウェブサイトやSNSを活用し、魅力的な情報を発信できれば、旅行客の誘致につながります。
秋は、自然の美しさや食文化を楽しむ旅行客が増える季節です。紅葉が見頃となる公園や寺社には、多くの人々が訪れます。地元の食を楽しめるイベントも数多く開催され、各地で賑わいを見せます。自治体はこれらの情報を発信し、秋ならではの風景や体験をアピールしましょう。
また、地域の特色を活かした秋の味覚や料理を提供することで、地域経済の活性化にもつながります。観光資源を最大限に活用し、地域の魅力を伝えていきましょう。
冬は、スキーやスノーボード、温泉、そして美しいイルミネーションを楽しむ旅行客が増える季節です。それゆえ、スキー場や温泉施設、イルミネーションの開催場所や時間、周辺のグルメやアクティビティなどの情報発信が、誘客には効果的です。冬ならではの魅力をアピールして、旅行客を誘致しましょう。
雪景色や温泉街の趣きなど、日本らしい冬の風景もこの時期の大きな魅力の1つです。自治体は、情緒ある風景や街並みをうまくアピールし、訪れる旅行客にとって思い出に残る冬の旅行を提案しましょう。
来訪目的や時期だけでなく、スマートフォンユーザーの位置情報を活用したターゲティング広告配信も旅行客誘致に高い効果を発揮します。
ここからは、位置情報を活用したターゲティングの例を紹介します。
自治体が開発したスマートフォンアプリは、旅行者の旅をサポートする便利なツールです。アプリを使用することで、旅行客はスムーズに観光情報を入手できます。一方、自治体はアプリから訪問者の位置情報を把握し(※)、最新の情報をアプリから発信できます。その際に有効なのが、ジオフェンシングと呼ばれる仕組みです。
※ユーザー同意の取れた情報
ジオフェンシング機能とは、特定のエリア内にスマートフォンが入った場合に、位置情報を元に自動的に情報を配信できる機能です。
ジオフェンシング機能を活用すれば、近くにある観光名所やおすすめのレストラン、イベント情報などが提供できます。加えて、アプリ内で特定の場所を訪れた場合に使える割引クーポンなどを提供すれば、旅行者の満足度をさらに高められるでしょう。
地方自治体の旅行客誘致において、パーソナライズド広告の活用は重要な戦略の一つです。
パーソナライズド広告とは、ユーザーの興味関心に合わせて表示される広告です。
旅行者の興味や行動履歴年齢や性別、家族構成などデモグラフィックデータを分析したうえで提供されるため、自治体と旅行者の双方にメリットのある広告といえます。
また、広告配信の効果を測定し、改善につなげることが可能です。自治体の観光振興にとって欠かせないツールであり、今後ますます重要性が高まると考えられます。
来訪目的や時期ごとに効果的なPRを実施し、誘客施策に成功した自治体の事例を紹介します。
兼六園やひがし茶屋町など有名な観光スポットが多数ある石川県金沢市は、訪日客向けのインバウンド対策に注力している点が特徴的です。外国人旅行者へのPRに成功した事例といえます。
まず、公式の観光サイトを外国人観光客向けに8ヶ国対応にリニューアルし、動画配信などを利用した情報発信を始めました。さらに、割引券や観光パスポートなどを発行し、市内の美術館や博物館などのアート施設巡りを促進しています。これらの施策により、外国人旅行客の誘致に成功しました。
特に、「Geisha Evenings in Kanazawa」などのプログラムを英語対応で開催し、多くの外国人観光客から好評を得ています。
金沢市の成功のカギは、伝統や街のよさを活かしながら効果的なPRを推進した点にあるといえます。
北海道函館市は、公式観光情報サイト「はこぶら」を立ち上げ、様々なターゲットへの誘致をおこなっています。
市が実施した施策の例としては、訪日外国人に向けた公式サイトの多言語化(7か国語)対応や、若い世代に向けたSNSでの情報発信などが挙げられます。学生の卒業旅行をターゲットにした「卒旅キャンペーン」もおこなっています。
さらに、同サイト内で「AIコンシェルジュ」というコンテンツを展開しています。「AIコンシェルジュ」は、サイト利用者が「誰と旅行するか」「どんな旅が好きか」「何に興味関心があるか」を選択するだけで、理想のモデルコースを作れるサービスです。
AIコンシェルジュの利用者は、例えば「定番コースを楽しみたいカップル」や「体験型の旅を楽しみたい家族」、「歴史や文化に触れたい年配層」など、それぞれにカスタマイズされた旅行を計画できます。これにより、様々なターゲットへの訴求が可能です。
自治体の旅行客誘致において効果的なターゲティングをおこなうには、マイクロアドが提供する「まちあげ」がおすすめです。特徴などを具体的に紹介します。
「まちあげ」は、地方自治体のニーズや課題に合わせたターゲティング広告配信サービスです。
マイクロアドが提供しているサービス「UNIVERSE」が保有するWeb上の行動履歴や位置情報データを分析し活用することで、最適な広告配信が可能です。また、広告配信の前後を比較し効果を測定することで、今後のプロモーションに活かせます。
さらに、広告接触者の関心が高かった地域を都道府県別に分析し、レポートを提供することも可能です。プロモーションに対しての意識変化をアンケートで調査できるため、旅行客誘致のためのマーケティングに最適です。
四国エリアで旅行を検討している方に向けて、観光地をPRした広告を配信した実例です。
ターゲット |
旅行興味関心者 |
指標 |
認知 |
CPC |
26円 |
掲載期間 |
1ヵ月 |
Webサイトで四国旅行を検索している方々に向けて広告を配信した結果、CPCが26円と非常に効果的な広告配信を実現することができました。
地方自治体の誘客には、効果的なターゲティングとそれに応じたマーケティング戦略の実施が重要です。来訪目的や時期に応じた訴求も欠かせません。
自治体の旅行客誘致にお悩みの方は、ぜひこの記事を参考に、課題解決に取り組んでいきましょう。