自治体が事業をおこなう際は、その財源が税金によって賄われているため透明性を担保しつつ、よりよい条件で事業者を決定する必要があります。
事業者の選定にはいくつかの方法が存在しますが、その中でプロポーザル方式を採用するケースが増えています。
プロポーザル方式は、最も適した提案内容を提示した企業を総合的に評価をして選定する方式です。
この記事では、プロポーザル方式とコンペや入札との違い、プロポーザル方式のメリット・デメリットなどを解説します。さらに、プロポーザル方式を利用する流れや、効果的な選定方法をご説明します。
具体例として、プロポーザル方式でPR業務を委託するケースをご紹介します。自治体職員のみなさまは、ぜひ参考にしてください。
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プロポーザル方式は、日本語では企画競争入札と呼ばれています。
地方自治体などが業務を外部に委託する際に利用する発注方式です。プロポーザル方式では、不特定多数の企業から定められたテーマの企画書や提案書などを提出してもらい、最適な提案をおこなった企業を主催者が選定して契約します。
また、プロポーザル方式は、提案者(人)を選定する方式であることが特徴です。事業やサービスについての提案内容に加えて、以下のような内容を含めた提案を受けて、主催者が提案者を総合的に判断します。
プロポーザル方式が主に活用される分野としては、建築コンサルタント・システムコンサルタントや建築設計が挙げられます。そのほかにも、以下のような分野でも採用される場合があります。
以上のように、幅広い分野においてプロポーザル方式が活用されています。なお、地方自治体が事業をおこなう際に委託する企業を選定する方法として、プロポーザル方式以外にも以下が考えられます。
プロポーザル方式とそれぞれの選定方法との違いについて説明します。
プロポーザル方式は提案者(人)を選定する形を採用するのが特徴です。
一方で、コンペはあくまでも受けた提案内容を重視して最適な企業を選定する点が異なります。コンペは提案内容を選ぶ方式であるため、選定した後の事業実施が円滑に進められます。一方、プロポーザルは受注企業と共同でプロジェクトの進捗が可能で、発注者サイドの要望を反映しやすい点がメリットです。
コンペの場合、デメリットとしては選定されなかった場合の企業側の損失が大きい点などが挙げられます。プロポーザルのデメリットは、実績も重要な要素となるため新規企業が参入するのが難しい点です。
入札の場合、選定する重要なポイントは基本的に価格です。安い価格を提示した企業が選定される可能性が高くなります。
自治体などの公共ビジネスでの入札は、入札参加資格を設定して、企業の信頼性や製品・サービスの品質をチェックしたうえで企業が選定されます。
一方で、プロポーザルは入札価格だけでなく、客観的な評価基準による公正な審査で最適な企業が選定される方式です。なお、総合評価落札方式と呼ばれる、プロポーザル方式と入札のメリットを組み合わせた選定方式もあります。
総合評価落札方式は、企業側から提案された内容など多面的な判定項目により企業を絞り込み、最終的に価格で決定します。
プロポーザル方式の種類として、大きく以下の2種類があります。
それぞれの違いを解説します。
公募型プロポーザル方式とは、地方自治体などが応募した企業の中から最適な企業を選定する方式です。事業に参加したいと考えている企業は、発注者が作成した仕様書に従って、定められた期日までに提案書を提出します。
その後、自治体側が各企業から提出された提案書をチェックして、事前に規定した評価基準に従って採点し、事業を委託する企業を選定します。
環境配慮型プロポーザル方式は、国や独立行政法人などが建築工事や規模の大きな改修工事を実施するケースで、委託する企業を選定する際に採用されています。
温室効果ガスなどの排出削減に配慮する内容を含めた選定方式です。
自治体がプロポーザル方式で入札したり契約したりする場合、次のようなメリットがあります。
プロポーザル方式の場合、発注者と受注者との間で協業の形で事業を進められるメリットがあります。これにより、自治体と企業のスムーズなコミュニケーションが可能になるため、業務のスピードアップが見込めます。
さらに、成果物の品質マネジメントが可能となり、納期遅れなどの発注先とのミスマッチを避けられる点は大きなメリットです。
プロポーザル方式では、提案内容と価格を発注者が総合的に評価して契約交渉に臨むのが特徴です。発注者と受注者の協議によって契約内容を変更することも可能なため、双方の金額や納期などの要望を反映することができます。
場合によっては、契約した後でも各種交渉を柔軟におこなえる点がメリットとなります。
自治体がプロポーザル方式で事業を委託する場合、次のようなデメリットが考えられます。
プロポーザル方式では、コンペ方式のように提案書だけを確認して選定する方式ではありません。地域貢献なども選定基準となるため、全く実績がない企業が参入しようとしても評価しづらい点がデメリットです。
もし、技術力が高い新興企業であっても、実績がない場合は機会を損失する可能性は否定できません。
プロポーザル方式では、仕様書に従って客観的な判断基準を用いて最適な企業が選定されます。ただし、前提として評価項目とスコアの明確化が必要です。
透明性や公正性を担保できる反面、発注者である自治体は応募する企業に評価基準を説明する責任があります。
自治体がプロポーザル方式によって企業を選定する場合、以下の流れで進めます。
最初のステップとして、参加資格条件を発注者側で選定しなければなりません。そのうえで適切な審査をおこなうための審査委員会を設置して、公平性と透明性を確保しましょう。
また、参加資格条件を選定する前に、以下の資格と基準を定めましょう。
あらかじめこれらを定めたうえで、公募手続きを開始します。
参加資格条件が決定したら、発注者は役所の掲示場やWebサイトなどで公示して、同時に具体的な参加要件を示した説明書を交付しなければなりません。必要に応じて説明会の開催も検討しましょう。
手続き開始の公示の内容を見た企業側から、概ね公示から10日以内に参加表明書の提出を受けます。
発注者は、参加者となる技術提案書の提出を求める企業に対して、選定通知を送付します。また、選定から漏れた企業に対しても、選ばれなかった理由を含めた非選定通知をおこなうのが一般的です。
参加者に選ばれた企業に対して、本当に受注する意思があるかを確認すると同時に、技術提案書の提出を求めます。事業規模や業務内容にもよりますが、提出期限は選定通知をおこなってから10日から20日程度に設定するのが一般的です。
企業側から技術提案書の提案を受けた後、発注者は20日以内を目安として提出者へのヒアリングを実施します。ヒアリングは、基本的に提出者から説明を受けたうえで、質疑応答の形で対応するのが一般的です。
技術提案書及びヒアリングの結果から、審査委員会などの組織によって技術提案書の評価を実施します。そして、最終的にどの企業を優先交渉権者とするのかを決定し、結果を参加した企業に通知します。
決定した優先交渉権者と発注者との間で、予定していた価格の範囲内で最終的な交渉をおこないます。交渉が成立した場合は、契約を締結するという流れです。
国土交通省のガイドラインでは、契約が締結されるまでの目安として、技術提案書の特定・通知後15日程度とされています。
引用:建設コンサルタント業務等における プロポーザル方式及び総合評価落札方式の 運用ガイドライン
自治体がプロポーザル方式を利用する際は、以下のような点に注意して選定しましょう。
観的な評価基準や選定プロセスの透明性が担保されていれば、安心して入札に参加できます。
発注者となる自治体は、技術提案書に対する明確な特定基準を作成するなど、公平性や透明性を意識してプロポーザル方式を活用しましょう。
プロポーザル方式において、各フェーズで審査委員会等による参加者の選定や評価などがおこなわれます。発注者となる自治体は募集要項や仕様書などで、具体的な評価基準などを明らかにすると同時に、委員の選定基準を示すことが重要です。
この委員会に参画する選定委員を、誰がどのように担当するのかを明確にする必要があります。特に、選定責任者に関しては、募集要項や仕様書に明記するのが一般的です。
これにより、入札への参加を希望する企業側としてはより安心して応募できます。
公平性や透明性を明確にするために、評価項目や配点を記載した評価基準表を作成し、募集要項や仕様書と共に公表しましょう。評価基準としては、事業実施方針・過去の実績や地域貢献度などを設定するのが一般的です。
評価基準だけでなく、選定する際のプロセスもしっかりと募集要項や仕様書などに示すことを意識しましょう。
自治体の様々な業務のうち、PR業務は民間に委託するケースが多いのが特徴です。
自治体において、歴史・文化や観光資源など自らの地域の魅力を周囲にアピールすることは重要です。地域住民に正しい情報を伝えるだけでなく、観光客や移住希望者のニーズにマッチしたPRをおこなわなければなりません。
その際、ほかの地域との差別化を図る意味で地域ブランディングを意識する必要があります。
さらに、企業誘致を目的として、地域や自治体の魅力をいかに伝えられるかもポイントとなります。また、地域の魅力発信を目的として、地域住民や企業・団体などのステークホルダー同士をつなぐこともPR業務の目的の1つです。
自治体の魅力をPRする際に、プロポーザル方式により民間企業を選定して委託する場合があります。もし民間への委託を検討している場合は、観光庁が作成した「観光地域づくりに対する支援メニュー集」を参考にしてください。観光地域づくり法人であるDMOが集約した同メニュー集は、自治体がPR業務に取り組む際に役立つ情報が満載です。
実際に、以下の自治体が観光PR事業にプロポーザル方式を活用した実績があります。
今後も各自治体で、インバウンド客の取り込みなどを目的として、PR業務をプロポーザル方式で募集することが予想されます。
自治体の魅力をPRをする際に、どのような広告配信プラットホームを選定して、自治体の魅力を効果的に訴求できるかがポイントとなります。
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数値化されたデータとなるため、客観的にどのような効果があったのか、そして今後の戦略を決定するための重要なデータとして活用できるメリットがあります。
プロポーザル方式は、提案内容ではなく、業務を委託する最適な提案者を選定することが特徴です。
発注者と受注者の協業が可能なため、認識のずれが起こりづらく納期の遅延リスクを下げることができます。
公正性や透明性を担保しなければならない点は留意する必要がある一方で、お互いが交渉したうえで最適な契約を結べるメリットもあります。
自治体職員のみなさまは今回紹介した情報を参考に、観光PR事業などでプロポーザル方式で募集してはいかがでしょうか。また、自治体のWebプロモーションでは広告配信プラットホーム「まちあげ」を活用するのもおすすめです。