国土交通白書2020によると、日本の総人口は2008年(平成20年)の1億2.808万人をピークに減少に転じています。人口減少は地方自治体に大きな影響を及ぼしており、その対策が急務です。
各自治体は人口減少を食い止めるために、それぞれの特徴を活かした自律的で持続的な社会を創生する地方創生の取り組みを推進しています。
本記事では、人口減少を克服するための具体的な対策や、すでに取り組みをおこなっている自治体の事例をご紹介します。
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日本で人口減少が進んでいる主な要因として、少子化が挙げられます。少子化が進む理由として、結婚や出産に対する意識の変化や、子育てを取り巻く生活環境への不安、経済的負担などが考えられます。
また、ここ数年、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、出生数がさらに低下しました。
まずは、人口変動が意味するところと、人口減少に関連する数値の変化について解説します。
上記3つの観点にわけて詳しくみていきましょう。
総務省統計局が発表している「 人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)」によると、日本の総人口は12年連続減少しています。2022年10月1日時点での総人口は1億2494万7千人で、前年に比べ55万6千人の減少です。
人口の変動には、他の国や地域からの転入および転出の社会増減と、出生・ 死亡人数による自然増減の二つの側面があります。先ほどの人口推計によると、自然増減は73万1千人の減少で、減少幅は拡大している状況です。
社会増減については、日本人は1万6千人減少していますが、外国人が19万1千人増えているため、社会増加となっています。
厚生労働省の「令和4年(2022) 人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、2022年の人口に対して生まれた子供の数を表す特殊出生率は1.26です。これは前年の1.30を下回る過去最低の数字で、少子化の傾向が続いています。
人口推計(2022年(令和4年)10月1日現在)によると、出生した赤ちゃんも含めた15歳未満人口は前年に比べ28万2千人減少しました。日本の総人口のうち、15歳未満が占める割合は11.6%で毎年減少が続いています。
一方、75歳以上人口は前年にくらべ69万1千人増加しており、総人口に占める割合は過去最高の15.5%です。年々、少子高齢化が進んでいることがわかります。
有効求人倍率とは、求職者1人に対して何件の求人があるかを示す数値です。
有効求人倍率が高いと、求職者に対する求人数が多いため人手不足になります。また、似た言葉で新規求人倍率という、新規求職申込件数に対する新規求人数の割合を示す数値があります。これらは、共に雇用状態を表すのが特徴です。
厚生労働省が発表している「一般職業紹介状況(令和5年3月分及び令和4年度分)について」では、以下の結果が報告されています。
この数値からわかるのは、求人を掲載している企業にとって希望する年代の働き手が不足しているという状況です。
人口減少の要因を様々なデータからみてきました。この章では、人口減少が進むと自治体にどのような影響を及ぼすのかを解説します。
地域住民が日常生活を送るために必要な各種サービスは、一定の人口規模のうえに成り立っています。
人口が減少し過疎化が進むと、必要な人口規模を確保できなくなり、金融機関・病院・飲食店・小売店などのサービスの縮小や撤退につながるでしょう。その結果、生活に必要な商品やサービスを入手することが困難になる恐れがあります。
生活関連のサービスと同様、人口減少が進む自治体では、公共交通機関の維持・存続も大きな課題となっています。通勤・通学や通院などの移動手段として、様々な方が利用する公共交通機関の運営元は民間の事業者です。
民間事業者は採算が取れないサービスを維持し続けることは困難です。さらに、人手不足から運転手の確保が難しいという事情もあります。今後、採算の取れない路線からの事業者の撤退やサービス縮小がより一層進むことが予想されます。
人口減少により地域経済や産業が縮小した場合、空き家・空き店舗や放棄された土地の増加も懸念されます。後継者不足により店じまいした店舗や、採算が取れずに撤退した工場などの管理・運用、あるいは処分方法も大きな課題です。
人口減少は地域コミュニティの機能低下にもつながります。町内会や自治会など住民同士で共助してきたコミュニティの機能が低下すると、防災団や自衛団などの活動の維持も難しくなるでしょう。
さらに、地域でおこなってきた祭りや地域活動も維持・存続できなくなってしまう恐れがあります。このように地域コミュニティの機能が低下すると、住民の地域への愛着も失われ人口流出が加速するリスクが生じます。
人口減少が進む中で、各自治体が人口の流出を食い止めようと様々な対策を講じています。ここからは、そんな人口減少対策の事例を4つご紹介します。
市の事例です。
可児市には、国史跡の美濃金山城跡を始め市内10か所に城跡が残っています。その山城を貴重な資源として活用し、地域活性化に役立てる施策として、官民合同で「チャンバラ合戦-戦IKUSA-」を実施しました。
「チャンバラ合戦-戦IKUSA」における地域創生の取り組みには、3つの特徴があります。
チャンバラ合戦-戦IKUSAの企画や運営は自治体側でおこない、リピーターを増やすための施策立案は地域の若者に委ねています。ほかにも「Kanisuki若者プロジェクト」を立ち上げるなど、地域の若者が行政課題に取り組む機会を積極的に設けているのも特徴です。
取手市は「とりで未来創造プラン2020」を策定し、3つのテーマを掲げて様々な対策を講じています。3つのテーマとは、具体的には以下のとおりです。
テーマ |
戦略 |
活力の創出 |
まちの質を高める都市整備 雇用の創出 |
少子高齢社会への対応 |
子育て施策の推進 健康・生きがいづくり 定住の促進 |
協同と持続可能な自治体経営 |
協同のまちづくり 健全な行政運営の推進 |
取手市が人口減少の対策として特に力を入れているのは雇用の創出です。若者の市外への流出を防ぎ市内に留まってもらえるように、レンタルオフィスの設置やセミナーの開催など、起業家を応援し、起業を促進する仕組みを構築しています。
そのほか、若者の定住支援や空き家を活用した拠点整備にも力を入れてます。
佐賀県嬉野市は、「嬉野市まち・ひと・しごと創生推進計画」を策定し、人口減少の施策の実行に対しKPIを定めています。具体的な目標は以下の4つです。
それぞれのKPIは交流人口239万5千人、新規雇用者数(5ヵ年累計)150人、出生数(5ヵ年累計)1,000人、65歳以上人口に占める要支援・要介護者の割合17%未満などです。
嬉野市では、2015〜2019年度の第1期で実施してきた施策・事業の総合的な効果検証をおこなうと共に、継続的かつ重点的に第2期の総合戦略の取り組みを推進しています(※1)。
※1)嬉野市 第 2 期嬉野市まち・ひと・しごと創生総合戦略(令和5年3月改訂版)
徳島県神山町では、首都圏の企業の誘致を目指し、以下のような様々な取り組みを実施しました。
周辺自治体と連携してこれらに取り組んだ結果、平成28年時点で県内8市町に40社が36拠点に進出する結果となりました(※2)。
※2)内閣府 地方創生事例集
自治体は、人口減少による税収の減少を抑え、必要最低限の行政サービスを継続できるように対策を講じる必要があります。人口減少を克服するために、有効な対策を5つの観点から解説します。
多くの地方自治体で、少子化対策として婚活支援をおこなっています。自治体が運営・主催するサービスであるため、参加費用を抑えられるのがメリットといえるでしょう。
各都道府県で実施している婚活支援の中から、特色のあるサービスをピックアップしてご紹介します。
自治体 |
サービス名 |
特徴 |
北海道 |
北海道コンカツ情報コンシェル |
・個別オンライン相談会を実施 ・北海道への移住に興味がある方へ情報発信 |
新潟 |
ハピニィ |
・婚活サークルや県世話焼きイベント「寺婚」の開催 ・手作りピザ体験やケーキ作りなど参加者同士で盛り上がれるイベントを開催 ・ライフデザインセミナーなどを実施 |
神奈川 |
恋カナ!プロジェクト |
・婚活バスツアーを開催 ・結婚支援診断チャートで必要な結婚支援を知ることができる ・ライフ・キャリアに関するセミナーを開催 |
子育てのしやすい環境を創出するために、地方自治体は様々な対策をおこなっています。
そのうち2つをピックアップしてご紹介します。
自治体 |
プロジェクト名 |
特徴 |
滋賀県 |
すまいる・あくしょんプロジェクト |
・子ども達のアンケートを元に作成した新しい行動様式 ・子どもが自分自身のために行動できることと、それに対して大人が行動することの2つの視点を持つ ・2つの視点から7つの行動指標を策定 |
茨城県 |
いばらき結婚・子育てポータルサイト |
・子育ての援助をおこないいたい方と援助を受けたい方をマッチング ・放課後児童クラブの機能に加え、様々な体験活動や交流活動を実施 |
人口減少の原因の一つに、貧困問題も挙げられます。
政府は平成25年に「子どもの貧困対策の推進に関する法律」を制定。さらに従来より実施していた「地域子供の未来応援交付金」を拡充しました。
地域子どもの未来応援交付金は、以下の事業に対して適用されます。
子どもの居場所づくりを自治体が自らおこなうケースだけでなく、NPO等に委託するケースも補助金の受給が可能です。
さらに、既存のNPO法人がほかにも支援事業を開始する場合は、追加で補助金を申請できる可能性もあります。例えば、こども食堂を実施しているNPO法人が、学習教室を開く場合などです。
国土交通省では「デジタル田園都市国家構想総合戦略」を策定し、デジタルの力を活用した人口流出を防ぐための地域間連携の在り方や推進策を提示しています。「全国どこでも誰もが便利で快適に暮らせる社会」を目指す施策の方向性は以下の4種類です。
「地方に仕事をつくる」とは、すなわり東京圏への一極集中の是正を図り、地方に住み働けるための環境を整備する取り組みです。そのためには、地方でも都会と同様の情報・サービスを利用できるようにする必要があります。
都市部と地方で人の流れをつくるために、企業の地方移転・本社機能の配置見直しを促したり、地方への移住や定住を推進したりすることも重要です。
また、結婚・出産・子育ての希望をかなえるには、AIやビッグデータを活用した結婚支援なども有効です。仕事と育児の両立ができるように職場環境を整えるほか、男性の育児休業取得の推奨にも取り組みましょう。
魅力的な地域をつくるためには、デジタルを活用して生活に関連するインフラを整備する必要があります。交通・生活などのインフラ整備が欠かせません。加えて、地域の観光資源を有効活用した魅力的なまちづくりを続けていくことが大切です。
多くの自治体が、移住体験や住まいに関する補助まで様々な支援をおこなっています。支援制度を2つご紹介しますので、参考にしてください。
移住者を増やすには、移住に興味関心のあるユーザーにターゲットを絞り込んだ広告配信が必要です。具体的なターゲティング設定の事例については、次章で説明します。
※3)堺町 不動産情報 【入居者決定】20年住み続けたら無償譲渡!新築戸建住宅(第4弾)
※4)紋別市 令和5年度 紋別市おためし暮らし体験住宅の利用者募集(一次募集)について
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連携している位置情報や旅行・お出かけメディアといった多様なメディアの閲覧データを活用して、自治体のニーズに合わせた固有のターゲティングの作成が可能です。
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人口が減少し少子高齢化が進む中、各自治体における人口減少の対策は急務です。
本記事では人口減少の原因を探り、様々な取り組みをおこなっている自治体の事例をご紹介しました。
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