年末年始の帰省や冬休みの期間を含む冬は、カウントダウンイベント・雪まつりなど観光客に加えて帰省客をターゲットにした各種イベントが開催されます。多くの自治体では、この時期のイベントプロモーションに力を入れて取り組んでいます。
コロナ禍を経てリモートワークが浸透しました。自宅で様々なコンテンツに触れる機会が増え、消費者のニーズは多様化しています。広報誌・チラシの配布や紙媒体の広告といった従来のプロモーション方法だけでは、成果を上げづらくなっているのが実情です。各自治体においても、これらの急速な変化への対応や時代に合わせたアプローチが求められています。
本記事では、冬のイベントプロモーションをおこなう重要性・自治体が抱えている課題・プロモーションをおこなううえでのポイントを解説します。そのほか、プロモーションの具体的な成功事例もご紹介するので、ぜひ参考にしてください。
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1.1 年末年始の観光客を誘客
1.2 帰省シーズンに往来が増加
1.3 外国人旅行者に日本の魅力をアピール
4.1 ターゲットを明確にする
4.2 消費者ニーズに合わせてアプローチする
4.3 ターゲットに合わせた発信をする
4.4 民間企業と連携する
5.1 SNS
5.2 YouTube
5.3 オウンドメディア
5.4 Web広告
6.1 北海道下川町/しもかわアイスキャンドルミュージアム
6.2 長野県飯山市/いいやま雪まつり
6.3 茨城県大子町/袋田の滝・氷瀑ライトアップイベント
年末年始の帰省や冬休み期間を含む冬は、観光客に加えて帰省客をターゲットにした様々なイベントが開催されます。以下、冬に開催される主なイベントです。
本章では、これらのイベントを開催する目的について解説します。
2022年の国内旅行消費額の推移を見ると、1年を通して7月〜9月がピークです。次いで10月〜12月が高い数値となっており、年末年始に人の動きが多いことがわかります(※1)。
トリップアドバイザーの調査によると、2023年冬の日本人旅行者のうち国内旅行を選択した割合は85%にのぼりました(※2)。
国内旅行客が多い年末年始にイベントを開催すれば、誘客につながる可能性が高いでしょう。
※1)国土交通省 観光庁 旅行・観光消費動向調査【図表1】 日本人国内旅行消費額の推移
※2)PR TIMES トリップアドバイザー、2023年冬の旅行動向を調査 2023年冬の旅行状況トレンド
帰省シーズンと重なるため、冬のイベントは地域外からの観光客だけでなく、里帰りしている地元出身者の集客が期待できます。
積水ハウス株式会社の「年末年始に関する調査」(2023)によると、年末年始は自宅で過ごすと回答した人が全体の56.8%、実家に帰省すると答えた割合は33.8%でした(※3)。
魅力的なイベントを開催して効果的なプロモーションを展開できれば、地域住民や帰省客の集客が見込めるでしょう。
※3)積水ハウス 義実家への帰省は4割が「気を遣う」ことにお悩み もっと気楽な家族団らんのヒント
観光庁の訪日外国人消費動向調査によると、2023年の訪日外国人旅行消費額は5兆2,923億円で、過去最高を記録しました(※4)。
訪日外国人の観光需要は7月がピークで、次いで3月〜4月が多くなっています(※5)。1年の中で需要が最も少ない12月〜2月に外国人旅行者をいかに取り込めるかが、地域のブランディングならびに活性化のカギといえるでしょう。
また、タイやシンガポールなど一年中気温が高い東南アジアの人々は、自国では体験できない雪やウインタースポーツに魅力を感じて観光に訪れるケースも少なくありません。地域ならではの伝統や観光資源の魅力を発信し、インバウンド需要の喚起を図るのも冬のイベント開催の大きな目的といえます。
※4)国土交通省 観光庁 【訪日外国人消費動向調査】2023年暦年 全国調査結果(速報)の概要
※5)経済産業省 訪日外国人消費指数の動きと季節変動パターン
冬のイベントで観光客・地域住民や里帰りしている地元出身の方を集客するには、効果的なプロモーションが不可欠です。ここでは、冬のイベントプロモーションをおこなう重要性について解説します。
冬のイベントプロモーションは、地域ならではの特性・強みをアピールでき、差別化とブランディングを図れるチャンスです。
地域のお祭りを開催する際に、ただ来訪を促すのではなく地域特有の魅力を併せて発信することで、集客が大きく変わる可能性があります。例えば、「雪まつりを開催します」よりも「かまくらで地酒が楽しめる雪まつりです」とPRする方が、付加価値を感じる方は多いでしょう。
地域のブランド力が高まれば、移住者の増加や地域活性化が見込めます。したがって、イベントのプロモーションは非常に重要です。
冬のイベントプロモーションには、地域住民のエンゲージメント(=つながり)を高める目的もあります。プロモーションによってイベントが盛り上がれば、地元住民の地域に対する愛着が高まるでしょう。住民が地域に愛着を持ち定住意識が醸成されると、人口流失や過疎化などの問題解消も期待できます。
また、イベントプロモーションによって観光客が増加して地元企業の売上が拡大すれば、雇用機会の創出や人材不足の解消にもつながります。
各自治体が様々なイベントプロモーションを実施しているものの、思うような成果を上げられないケースが多いのが実情です。ここでは、自治体がイベントプロモーションをおこなううえでの課題をみていきましょう。
まず、イベントやイベントプロモーションをおこなうための予算確保が難しいという点が大きな課題です。
自治体によってプロモーション費用は100万円未満から5,000万円以上まで大きく異なりますが、費用の大小にかかわらず8割以上が財源不足を課題に挙げています(※6)。
また、プロモーション費用が1,000万円以上の自治体においても「改善の余地がある」と感じている自治体が多く、予算に見合った効果を出せていない状況です。限られた予算の中で、いかに効果的なプロモーション活動をおこなえるかが重要です。
※6)月間事業構想 全国アンケートで明らかに 自治体シティプロモーションの実態
自治体がプロモーションをおこなう際は、他部局との連携や民間企業と双方にメリットが生じるように折衝する人材などの確保が必要です。しかしながら、プロモーションのノウハウを指導する人材や担当者の経験不足から、連携が上手くいってないケースが多いのが課題です。
少子高齢化・人口減少の影響や人材のミスマッチなどによる人手不足が慢性化しており、この点を解消しなければなりません。
観光客の誘客とプロモーションは自治体にとって欠かせない活動です。一方、地域外への訴求にばかりに注力してしまって、地域住民に対する周知が行き届いていないケースも少なくありません。
例えば、ある自治体で地域限定の電子マネーを導入したものの、周知が不十分で認知が広がらず、全く普及しなかったという事例もあります。
地元の住民を対象にした参加型のイベントを企画するなど、地域住民にも魅力を感じてもらえるような施策をおこなう必要があります。
ここ数年、コロナ禍で自粛生活が続く中で、余暇の過ごし方や消費行動が多様化しています。
例えば、ECサイト・フードデリバリーの利用・スポーツやエンタメのライブ配信など、オフラインからオンライン消費へのシフトが急速に進みました。その結果、実際に現地を訪れる観光の魅力が相対的に低下している点も浮き彫りになっており、対策が求められています。
多くの消費者が WebサイトやSNSを中心に情報を収集しているにもかかわらず、未だに広報誌やチラシなどのアナログな情報発信が中心の自治体も見受けられます。社会の変化やユーザーのニーズを読み取り、実情に沿ったプロモーション活動を展開しなければなりません。
冬のイベントプロモーションは、ただ闇雲におこなっても成果は得られません。本章ではイベントを成功に導くために押さえておくべきポイントを解説します。
イベントプロモーションにおいて、限られた予算の中で掛けた費用に見合う効果を得られなければなりません。プロモーションを実施する際にターゲットを広げ過ぎると、結局どの層の興味関心も惹かずに見込んだ効果が上がらない可能性があります。
年代・性別や趣味嗜好によってアプローチの仕方を変えるほか、地域やイベント自体に興味関心がある層に絞ったプロモーションを実施するなどの工夫が求められます。
自治体のイベント誘客において、地域資源を活用したプロモーションは有効です。その際、ターゲットとなる層が求めている商品やサービスなどのニーズを正確に見極めなければなりません。
地域を訪れる方や興味関心を持つ層に人気が高い場所や商品・サービスとマッチする訴求をおこなって、費用対効果が見込めるプロモーション活動を実施しましょう。
イベントプロモーションをおこなう際は、ターゲット層の利用率が高い媒体を活用した発信が効果的です。
プロモーションをおこなう情報発信ツールは、広報誌・動画・SNSなど様々です。例えば、若年層や女性がターゲットであればInstagram、ビジネス需要を狙うならFacebookといった使い分けが必要です。高齢者が多い地域では、紙媒体やケーブルテレビなどの地域メディアの活用が高い効果を見込めるでしょう。
自治体のイベントプロモーションには、民間企業との連携も不可欠です。豊富な経験やノウハウを持った民間企業との連携によって、スムーズな施策立案ができるようになり、効果の最大化も見込めます。例えば、ホテル・旅館や飲食店と協力し、イベントで提供する食事で地元の特産物をPRするのも一つの方法です。
また、今後のプロモーション活動に向けてのノウハウ蓄積にもつながるため、民間企業との連携強化が求められます。
続いては、冬のイベントをプロモーションする際の代表的な手法をみていきましょう。
SNSは、拡散力と手軽さでイベント情報を広範に届けられるのが最大のメリットです。主要なプラットフォームには、Instagram・X(旧Twitter)・TikTok・Facebookなどがあります。以下の表は、それぞれの特徴をまとめたものです。
プラットフォーム |
特徴(※7) |
|
・写真・動画投稿に特化 ・女性の利用率は50%を超える ・10代〜40代の利用率が50%を超える |
X |
・140文字以内のテキスト投稿で拡散性が高い ・男女の利用率はほぼ同じで約46% ・10代〜30代の利用率が50%を超える |
TikTok |
・15秒〜3分程度のショート動画 ・スマホで見やすい縦型動画が特徴 ・10代の利用率が60%を超える |
|
・実名登録が原則 ・企業のブログや採用にも利用されている ・30代〜40代の利用率が40%を超える |
※7)総務省情報通信政策研究所 令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
それぞれ特徴やメインとなるユーザー層が異なるため、使い分けが重要です。
動画によるプロモーションは、自治体においても主流になってきています。動画は静止画やテキストに比べて視認性が高く、短時間で多くの情報を視聴者に届けられるのがメリットです。
中でもYouTubeは、日本国内における18歳以上の月間アクティブユーザー数が7,000万人にのぼり、50代以下の全世代で利用率は80%を超えています(※8,9)。したがって、視聴者への影響力を持ったYouTuberやインフルエンサーなどとのコラボレーションは、非常に高いプロモーション効果が期待できます。
※8)Think with Google 日本 2022 年 YouTube トレンドとマーケティング活用へのヒント
※9)総務省情報通信政策研究所 令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査
公式サイトなどオウンドメディアを使った情報発信も重要です。
オウンドメディアには正確で信頼性のある情報を提供する役割があります。例えば、イベントのタイムテーブル・参加者の声や過去のイベントの写真など、多角的にイベントの魅力を伝えられるツールです。また、申し込みフォームや参加条件・料金などを明示して、具体的な行動を促す場としても活用できます。
SNSやYouTubeとの棲み分けも大切なポイントです。SNSは速報性を重視した発信に適しています。一方、公式サイトはより詳細な情報を発信して、問い合わせや申し込みなどの最終的な行動につなげる役割を果たします。
オウンドメディアとSNS、両方のメリットを活かせるのがブログです。こまめにブログを更新することで、SNS同様に速報性の高い情報発信が可能です。加えて、狙ったキーワードで検索上位に表示されれば、SNSへの拡散などによる新規ファン獲得も期待できます。
Web広告は、地域・年齢・性別・興味関心などによってターゲット層を絞り込めるのが特徴です。また、広告効果の測定が容易でどの経路からサイトへ流入したかなどの集計・分析が可能です。紙媒体やテレビ広告では困難な費用対効果の計測をおこなえるため、効果的かつ効率的なプロモーション展開が見込めます。
イベントのプロモーションを検討しているご担当者にとって、各自治体の取り組みは参考になります。ここでは、冬のイベントプロモーションの成功事例を3つご紹介します。
北海道下川町では、毎年冬になるとアイスキャンドルを作って町内各地に設置する「しもかわアイスキャンドルミュージアム」を開催しています。
下川町は観光資源の乏しい人口3,000人弱の小さな町で、人口減少の問題を抱えていました(※10)。そこで、町おこしの一環として1986年に「下川冬まつり」でキャンドルの設置を開始。町民が作ったアイスキャンドルを自宅やお店などに灯す文化が根づき、下川の冬を彩るイベントへと発展を遂げています。
Instagram・Facebook・X・YouTubeなどによる積極的なプロモーションを展開。情報発信だけでなく、SNS上でのフォトコンテストの開催など相互のコミュニケーションを醸成できるイベントづくりに取り組んでいます。
※10)下川町 町の人口・世帯数
長野県飯山市の「いいやま雪まつり」は、「市民が負担に感じている雪を資源と捉え、地域の活性化を図ろう」という想いから生まれたイベントです。
街の通りに雪像が並ぶ雪像ストリートや市民が制作した大型雪像のコンテスト、ウォークラリーなどが催されます。飯山城址公園に設置されたイベント会場では、協賛飲食店による飲食店ブースも立ち並び多くの人で賑わいます。
Facebookによる情報発信のほか、Instagramを活用したフォトコンテストの開催などを実施。遠方からの観光客を呼び込みつつ、地域に密着したプロモーションで地域住民のエンゲージメントを高めている好事例といえるでしょう。
日本三名瀑に数えられる茨城県大子町の袋田の滝では、秋口から2月頃までにかけて氷瀑のライトアップイベント「大子来人〜ダイゴライト〜」がおこなわれます。
太古の昔、袋田の滝に降り立った龍と大蛇の戦いという架空のストーリーを基に、照明とレーザーを駆使して袋田の滝をライトアップする幻想的なイベントです。
滝に向かうまでの道のりも、LEDライトを使用した「光のトンネル」の演出がなされており、訪れる人々をきらびやかに導いてくれます。恋人の聖地ともいわれている光のモニュメントや周囲の音に反応するインタラクティブなオブジェなどもあり、カップルや家族連れの観光客に人気です。
YouTubeやInstagramでの動画や写真の投稿を中心に、積極的にイベントのプロモーションを展開しています。また、公式ホームページではライトアップのスケジュールや、氷瀑の凍結情報が随時アップされています。
自治体のイベントプロモーションに適した広告配信プラットフォームとして「まちあげ」をご紹介します。
「まちあげ」では、観光・移住定住・ふるさと納税など、自治体の抱えるニーズや課題に合わせたターゲティングができます。加えて、データプラットフォーム「UNIVERSE」が収集する多種多様なデータの活用が可能です。例えば、位置情報データを基に、過去に訪問履歴がある方や、地域にゆかりのある層を選定した広告配信ができます。
そのほか、広告配信後の効果計測によって来訪者の多いエリアを可視化できる点も特徴です。具体的には、広告に興味を示された方の来訪予測をおこない、消費額の推定値を算出できます。広告の費用対効果を数値化できるので、より効果的なプロモーションに役立てられます。
年末年始や帰省シーズンなどを含む冬は、人の往来が活発になる季節です。したがって、自治体にとってイベント誘客につながるプロモーションは非常に重要な意味を持っています。
自治体のイベントプロモーションに関しては人員が足りない、ノウハウが不足しているなどの課題が挙げられます。SNSの活用や民間企業との連携などによってこれらの課題を解消し、冬のイベントプロモーションを成功に導きましょう。
記事の後半では、自治体のイベントプロモーションに適した広告配信プラットフォーム「まちあげ」をご紹介しました。限られた予算の中で効果的かつ効率的な冬のイベントプロモーションを模索しているご担当者は、ぜひ導入をご検討ください。