人口減少や高齢化など様々な地域課題を解決するために、観光振興のためのプロモーションなどに取り組んでいる地方自治体は少なくありません。しかしながら、「あまり効果が出ていない」「地域課題の解決にいたらない」という悩みを抱えている自治体も多いのではないでしょうか。
本記事では、地域課題解決のために観光振興が担う役割・集客を成功に導くポイント・効果的な情報発信ツールについて解説します。加えて、観光振興で成果をあげた自治体の事例をピックアップしていますので、参考にしてください。
記事の後半では、観光振興・プロモーションに活用できるサービス「まちあげ」をご紹介しています。観光振興を成功させて地域課題の解決を目指す自治体や代理店のご担当者は、ぜひ最後までご覧ください。
地域課題とは、地方自治体が抱える様々な社会的・経済的問題を指します。なかでも深刻なのが、「人口減少」と「高齢化」の問題です。人口減少と高齢化は地域経済を縮小させ、さらなる人口減少と少子高齢化につながるという悪循環をもたらします。
総務省統計局が発表した2022年の人口推計によると、日本の総人口は1億2,494万7千人です。47都道府県の中で最も人口が多い東京都の人口は1,403万8千人で、全国に占める割合は11.2%にのぼります。人口が最も少ない鳥取県(544万人)の全人口に対する割合は0.4%と、大きな開きがあります(※1)。
前年対比の人口増減率を見ても、全国の都道府県で唯一東京都のみが増加しており、増加率は0.20%です。人口増減率が最下位の秋田県は-1.59%、46位が青森県で45位が岩手県とワースト3を東北3県が占めています(※2)。
人口減少には、出生数を死亡数が上回ることで生じる「自然減」と人口流入数を流出数が上回る「社会減」の2種類があります。都市部に人口が集中する一方、地方では少子高齢化による自然減と若い世代の都市部への流出による社会減により過疎化が進行。これによって、空き家や耕作放棄地の増加などの問題が生じています。
※1,2)総務省 人口推計 2022 年(令和4年)10 月1日現在
2023年の推計では、総人口に占める65歳以上の高齢者人口の割合は29.1%と過去最高を記録しました。75歳以上の人口が初めて2,000万人を超え、日本の高齢者の総人口に占める割合は、人口10万人以上の200の国・地域の中で最も高くなっています(※3)。なお、15歳未満の人口が75歳以上の人口を上回っている都道府県は沖縄県だけです(※4)。
このまま若年層が減少して高齢者が増加すると、15歳以上で労働する能力と意思をもつ「労働力人口」が減少して労働力不足になる恐れがあります。さらに、介護や医療などの社会保障費用が増大して、それをまかなうための税負担の増加が避けられません。
※3)総務省 I 高齢者の人口
※4)総務省 人口推計 2022 年(令和4年)10 月1日現在
人口減少や少子高齢化が進むと、生産活動を中心となって支える15歳〜64歳の人口を示す「生産年齢人口」が減少します。働き手が不足すると、地方に進出していた企業や店舗が撤退を余儀なくされるなど地域経済は縮小していく一方です。
地域経済の縮小は、生活・行政サービスや社会インフラの維持を困難にし、地域の利便性が損なわれる恐れがあります。
地域課題を解決するために、観光振興に取り組んでいる地方自治体は少なくありません。ここでは、観光振興が担う役割について解説します。
観光産業による地域活性化は、魅力的な観光地として地域の認知度を高められます。その結果、地域住民が地元に誇り・愛着を持つ「シビックプライド」の醸成にもつながり、定住率の向上が見込めるでしょう。
「内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局」では、東京圏の方を対象に「地方での暮らしのどのような点に関心を持ったのか?」というアンケート調査を実施しました。最も多かった回答は、「山・川・海などの自然にあふれた環境」で55.8%。以下、「空間的・時間的に余裕のある生活」と(「生活コスト(物価・家賃等)が安価であること」が同率49.4%で続きます(※5)。
地方での暮らしに、都会にはない自然にあふれた環境や暮らしやすさを求めている移住者が多いという結果が出ています。自然を満喫できる観光スポットや安価に快適な生活を過ごせる環境などの魅力をPRすれば、定住・移住の促進につながるでしょう。
※5)内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局 東京圏、地方での暮らしや移住及び地方への関心に関する意識調査
観光振興にともなう経済活動は、GDPに対する割合で見ると農林水産業を上回り、食料品・化学製造業に匹敵します。コロナ前、2019年の旅行消費額は29.2兆円、波及効果は55.8兆円にのぼります(※6)。
2019年の旅行・観光消費にともなう税収効果は、推計5.3兆円です(※7)。税収が増えると税源が安定し行政サービスの向上に加えて、地域経済の活性化が期待できます。
※6,7)国土交通省 令和3年度版 観光白書
2019年の推計では、観光振興による雇用効果は456万人です(※8)。観光振興によって観光地のサービス業・飲食店・宿泊などの産業を中心に新たな雇用が生まれ、それにともない移住者・定住者の増加も期待できます。
※8)国土交通省 令和3年度版 観光白書
地域課題の解決において、観光振興が果たす役割は重要です。しかしながら、観光振興をおこなっていくうえでの課題も少なからず存在します。
デジタルスマートシティ推進財団がおこなった調査では、観光振興の課題として多くの自治体が「観光地としての認知度が低い」を挙げています。観光資源として活用できる観光名所や特産物があるにもかかわらず、その魅力を十分に伝えきれていない地域も多いのではないでしょうか。
観光資源を有効活用できていない要因として、「効果的な情報発信ができていない」「インフラが整備されていない」などが考えられます。
観光客が情報収集する手段は、各自治体や旅行会社等のHPやパンフレットのほか、雑誌・旅行に関するポータルサイト・SNS・個人のブログなど様々です。しかしながら、掲載メディア・発信手段の多さに加えて、人員不足もあって多くの自治体では効果的な情報発信ができていません。
特にWeb媒体を利用した情報発信では、どのメディアでどの層をターゲットに訴求するかといった戦略や相応の知識・スキルが必要です。ただでさえ人員が不足しているなか、担当者への教育が追いつかずリソースを確保できていないといった問題が散見されます。
観光振興において、観光客誘致の下地となるインフラ整備は不可欠です。しかしながら、上述のデジタルスマートシティ推進財団の調査では、予算や人材の不足などから整備が不十分だと感じている自治体は少なくありません。
例えば、多くの自治体でタクシーやバスなど二次交通利用時の乗り換え時間や待ち時間の長さや、運行本数の少なさなどが問題視されています。
また、訪日外国人に対する多言語対応も課題です。訪日外国人を対象にした観光庁の調査では、旅行中に困ったこととして言語の問題が上位に挙がっています。1位が「スタッフとコミュニケーションが取れない」で17.0%。次いで「多言語表示の少なさ・わかりにくさ」が11.1%という結果です(※9)。
世界的にキャッシュレス化が進む中、オンライン決済への対応も急務です。観光庁の同調査では、キャッシュレス対応に関する不満が15.5%を占めています(※10)。
※9,10)観光庁 令和元年度「訪日外国人旅行社の受入環境整備に関するアンケート」調査結果
ここでは、前章で述べた地域課題を解決に導くために、観光振興において押さえておきたいポイントについて解説します。
観光振興を図る際は、地域の独自性に着目しましょう。「これがあるから行きたい」と思ってもらえるような、地域特有の観光資源を活かした観光コンテンツを造成する必要があります。
文化資源・歴史資源だけでなく、地域に根ざしたアクティビティ・芸術・スポーツなども観光資源として活用可能です。例えば、スポーツは「好きなチームを応援するために試合を観に行く」「スポーツイベントの参加者が周辺地域の観光を楽しむ」といった形で観光客を呼び込めます。
また、山や湖などの自然資源を活用するグリーンツーリズムの推進や地元の企業と連携したPRイベントの開催など、活用できるコンテンツは多岐にわたります。
他の自治体等と連携してDMO(観光地域づくり法人)に参画するのも一つの方法です。
従来は各自治体や各産業が個別に観光施策を実施してきましたが、DMOが舵取り役となって観光振興を推進すれば、効率的に旅行客の増加や旅行消費拡大が見込めます。DMOに参画すると、情報支援・人材支援・財政支援など国から様々な支援を受けられるのもメリットです。
また、ワークショップやイベントなどを通して地域住民とのコミュニケーションを図ることも地域課題の解決に役立ちます。住民の意見を取り入れた施策は、シビックプライドの醸成にもつながるでしょう。
地域課題解決においてデジタル化の推進は急務です。
この3つの課題解決について、具体例を挙げて解説します。
1つ目の交通課題を解決する方法として「スマートモビリティ」が注目されています。スマートモビリティとは、AIや情報通信技術などの最新テクノロジーを活用し、交通システムやサービスの向上を図る考え方です。地域の観光振興では、カーシェア・駐車場予約システムなどに活用できます。
2つ目の人員不足の解消に関しては、多言語対応のチャットボットの活用で接客などの自動化を図ることにより職員の負担軽減が可能です。AIで位置情報や混雑情報を把握できれば、混雑緩和の施策も立てられるので、サービスレベル低下の防止にもつながります。
3つ目の観光資源の発掘には、loTやICTが活用できます。例えば、道の駅などにクラウド型カメラを設置し、大量の車番データを収集。その情報を基に来訪者の行動や訪れた地方をAI・機械学習などで割り出して分析すれば、地域の特性や新たな強みを発見できるほか、観光資源の発掘につながります。
上述のとおり地域の観光振興における課題の一つに、効果的な情報発信がおこなえていない点が挙げられます。本章では、観光振興における有効な情報発信の方法について解説します。
イベントで地域の特産物紹介やプロモーションビデオの放映をおこなう訴求の仕方は、代表的な情報発信の方法といえるでしょう。試食会や体験イベントなどを通して、来場者が直接地域の魅力に触れられるというメリットがあります。
ほかの自治体や近隣地域との合同イベントの開催も効果的です。より多くの来場者が見込まれるので、潜在顧客に地域の魅力を知ってもらうきっかけになります。
株式会社トリドリのSNSに関する調査レポートによると、6割以上のユーザーが旅行先を選ぶ際に、SNSの情報を重要視しています。(※11)。SNS利用率は70代でも6割を超えており、幅広い層へ訴求できる情報発信手段といえるでしょう(※12)。
SNSは写真や動画などで視覚的に魅力を伝えられる点と拡散性の高さが特徴です。なかでも、観光プロモーションと親和性が高いのが、InstagramとYouTubeです。
楽天LIFULL STAYの「若者の夏の旅行に関する調査」(2022年)によると、15歳〜25歳は旅行の情報を「Instagram」で集めているという回答が62.8%でした。これは「Google・Yahooなどの検索サイト」の54.8%を上回っています(※13)。
さらに、総務省の調査では、YouTubeの利用率は男女ともに8割を超え、60代でも6割以上が利用しています(※14)。YouTube動画は広告費を抑えたうえで幅広い層に訴求できるため、観光振興に役立つツールです。
※11)PR TIMES 【調査レポート】6割以上のユーザーが旅行先選びでSNSの情報を重視!観光業界が知っておきたい「SNS×旅行」の新習慣を、インフルエンサーマーケティング企業toridoriが徹底調査
※12)総務省 令和4年版 情報通信白書|データ集(第3章第8節)
※13)楽天グループ株式会社 楽天と楽天LIFULL STAY、若者の夏の旅行に関する調査を実施 「いつもと違う環境でのリフレッシュ」などが旅行目的の上位に
※14)総務省 令和4年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書
広告と一言にいっても、その種類は様々です。主にインターネット広告・マス広告・SP広告の3種類に大別されますが、それぞれの広告は、手法によってさらに細分化できます。
各広告の手法とメリット・デメリットを以下の表にまとめました。
広告手法 |
メリット・デメリット |
|
インターネット広告 |
・リスティング広告 ・ディスプレイ広告 ・アドネットワーク広告 ・SNS広告 ・動画広告 ・アフィリエイト広告 ・インフルエンサー広告 ・アプリ広告 |
【メリット】 ・細かいターゲティングが可能 ・効果測定が容易 ・費用対効果が高い 【デメリット】 ・効果検証が必要 ・広告配信の知識が必要 ・炎上のリスクがある |
マス広告 |
・テレビCM ・雑誌広告 ・新聞広告 ・ラジオ広告 |
【メリット】 ・広告の露出範囲が広い ・認知向上につながりやすい 【デメリット】 ・出稿費用が高額になりがち ・効果測定が難しい |
SP広告 |
・屋外広告 ・交通広告 ・折込チラシ広告 ・イベントプロモーション ・店内プロモーション ・同封・同梱広告 ・フリーペーパー広告 ・ダイレクトメール |
【メリット】 ・反復性が高い ・比較的コストを抑えられる 【デメリット】 ・影響力が弱い ・宣伝効果が限定される |
近年はネットで情報収集するユーザーが多いため、特にインターネット広告の重要度が高まっています。それぞれの特徴・メリット・デメリットや各媒体のメインユーザー層を把握したうえで、自治体の特性にあったものを選定しましょう。
観光資源や強みとなる部分は地域によって異なるため、それぞれの地域特性に合わせたアプローチが重要です。ここでは、地域の独自性を活かして観光振興で地域課題を解決に導いた自治体の成功事例をご紹介します。
長崎県の小値賀町では、かねてからの課題であった地域の過疎・高齢化を解消するために、移住者を中心とした日本版DMO「おぢかアイランドツーリズム」を設立。若者の雇用創出と観光客が満足できる「滞在体験型観光」の実現を旗印に、観光振興の取り組みをスタートしました。
自然体験活動ツアーや古民家を観光資源として民泊事業などに活用し、観光客数は順調に増加。観光地域としてのブランド化を実現しました。
また、海外からの修学旅行生など外国人観光客も積極的に受け入れ、国際交流の促進もおこなっています。継続的な取り組みの結果、外国人の訪問数は増え続けています。
岐阜県高山市は、歴史的な町並みや高山祭などの伝統的な行事・温泉などの地域資源を最大限に活かした観光振興の取り組みに力を入れています。官民一体となった観光誘致を展開した結果、国内外からの観光客数は順調に増加しました。
また、受け入れ環境の整備として、観光客の実際の声を取り入れた「バリアフリーのまちづくり」も成功の下地となっています。
身体障がい者のための道路の段差解消や車いすのレンタルといった物理的なバリア解消だけでなく、外国人観光客に対する「情報のバリア解消」を掲げているのも特徴です。案内看板やパンフレットの多言語化・無線LAN環境の整備などをおこない、「外国人が一人歩きできるまち」を目指しています。
鳥取県境港市は、地域の活性化を目的として「妖怪」をモチーフにした観光まちづくりをおこなっています。
境港市出身で「ゲゲゲの鬼太郎」の作者水木しげるさんの協力の下、駅から中心市街を結ぶ目抜き通りに「水木しげるロード」を整備。全国から出資者を公募して、妖怪ブロンズ像を設置するなどの取り組みをおこないました。企画や財源確保のために民間のアイデアを取り入れるなどの工夫も成功要因の一つです。
当初は「妖怪」というワードに地域住民は難色を示していましたが、市の粘り強い説得が実り企画が実現しました。こうした努力もあって観光客は着実に増えています。
観光振興で地域課題を解決したいと考えている自治体に適したサービスとして、自治体の観光プロモーションに役立つ「まちあげ」をご紹介します。
「まちあげ」とは、自治体のニーズや課題に合わせたターゲティングが可能な自治体に特化した広告配信プラットフォームです。
例えば、観光客をターゲットに広告配信をおこなう際に、ユーザーの属性や旅行の目的別にセグメント分けをおこないアプローチできます。また、位置情報データを活用して過去に訪問履歴があるユーザーへの訴求も可能です。
自治体の取り組みに興味や関心を持っている層にピンポイントでアプローチできるため、高い費用対効果が見込めます。
「まちあげ」の特徴として、広告配信後にどのような方が地域に興味を持ったのかを「見える化」できる点が挙げられます。来訪者の居住エリア・勤務エリアの割合を計測した詳細な分析レポートによって来訪者の多いエリアがわかるので、効果的な配信エリアを設定できます。
来訪計測でユーザーの推定消費額も算出できるため、広告効果の可視化も可能です。加えて、アンケート調査レポートなどの機能を提供しており、蓄積したデータを今後の観光プロモーションに役立てられます。
都市部に人口が集中する一方、地方では少子高齢化や人口減少にともなう空き家や耕作放棄地の増加などの問題が生じています。各自治体がこれらの地域課題を解決するために観光振興に取り組むなか、人員不足や予算の問題で思うような成果をあげられていないケースも少なくありません。
本記事では、地域課題解決のために観光振興が担う役割・集客を成功に導くポイント・効果的な情報発信ツールについて解説しました。観光振興で成功している自治体は、地域の特性や強みを最大限に活用した施策や効果的な情報発信をおこなっているという共通点があります。
自治体によって抱えている問題は様々ですが、「まちあげ」では各自治体のニーズと課題にあわせた広告配信が可能です。この機会に、地域課題解決を目指し観光振興をおこなっていくための一つのツールとして「まちあげ」の利用をご検討ください。