地域ブランディングとは、地域の魅力や特性を明確にし、自治体の価値を高めるための戦略的な取り組みです。
近年、デジタル技術の進化によってオンライン上での情報発信やコミュニケーションが容易になりました。地域の魅力を発信する手段としてデジタル技術の活用も進んでいます。
本記事では、地域ブランディングが注目を集める理由・メリットや課題・進め方、成功に導くポイントについて詳説。加えて、地域ブランディング施策の成功事例と失敗事例をご紹介します。
地域ブランディングに興味がある方や、地域活性化に取り組む自治体のご担当者は、ぜひ参考にしてください。
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地域ブランディングとは、地域の持続可能な発展と直結する包括的な取り組みです。地域ブランディングの基本的な定義・目的と戦略について解説します。
地域ブランディングを成功に導くために、デジタル技術を活用する事例も増加しています。例えば、多くの自治体が公共データをオープンデータ化して、市民や企業・研究団体が自由に加工・商用利用できるような取り組みを推進しています。デジタル技術の有効活用によって、魅力的なコンテンツの作成からプロモーションまで実現可能です。
地方から都市部への人口流出や少子高齢化が進み、過疎化による労働人口の減少・耕作放棄地と空き家の増加・公共交通の利便性低下などの課題を抱える地域が増えています。
これらの地域課題の解決を図るための戦略的な取り組みとして、地域ブランディングが推進されるようになりました。本章では、地域ブランディングが注目を集める理由とメリットについて解説します。
地域ブランディングを成功に導くには、地域に点在する観光資源を活用し、ブランディングを強化する必要があります。地域ブランドが確立できると、他地域には無い魅力や特色のアピールによって、観光客の増加が見込めるでしょう。
地域ブランディングを成功に導くには、地域に点在する観光資源を活用し、ブランディングを強化する必要があります。地域ブランドが確立できると、他地域には無い魅力や特色のアピールによって、観光客の増加が見込めるでしょう。
地域ならではの魅力と価値を抽出したら、顧客層を細かく分類してペルソナを設定しましょう。ペルソナとは、商品やサービスを提供する際にどのような顧客に向けたものであるか、その具体的な人物像を指します。
まずは、性別や年齢・地域などで幅広くターゲットを設定し、その中から購入する可能性の高い顧客を区分します。商品やサービスを利用する可能性の高い顧客をコアターゲットとしたうえで、ペルソナを設定しましょう。なお、ペルソナは市場の変化に応じてアップデートしていく必要があります。
デジタル技術を活用した幅広い層へのプロモーションと並行して、顧客層とのリアルコミュニケーションを図りましょう。リアルイベントを開催すると、参加者と地域住民との連携も実現できます。
地域ブランディングを進めていくうえで、様々な課題が生じる場合もあるでしょう。ここでは、3つの課題に焦点を絞って解説します。
地域ブランディングには、他地域との差別化ができるような資源が必要です。しかしながら、観光資源が乏しい地域においては、差別化を図る難易度が上がります。その際の方法として、歴史や文化・自然環境などの地域資源の活用が考えられます。
その地域ならではの特性を活かしたイベントや体験プログラムなどによる、地域の魅力発信も可能です。そのほか地元の郷土料理や伝統のお祭りなどの地域資源をブランディングに活用しましょう。
地域ブランディングには、地元住民の協力が不可欠です。しかしながら、住民との意思疎通が十分ではなく協力が得られない、もしくは時間を要する場合もあるでしょう。
地域住民の協力を得るには、日頃から地域住民と積極的にコミュニケーションを取る必要があります。具体的には、SNS等での地域住民との双方向コミュニケーションによって、ブランディングの周知徹底を図り当事者意識を高めるように働きかけましょう。
地域ブランディングの推進を図ろうとしても、上述のような全体の流れを俯瞰で判断して、ブランディングを実行に移せる人材が不足している場合があります。
また、地域ブランディングにはデジタル活用は必須です。しかしながら、デジタル活用に知見がある職員や人材が不足している地域も多いでしょう。外部の専門家や業者にかかる経費など、ブランディングを推進するうえで予算不足がネックになるケースも見受けられます。
地域ブランディングの進め方や課題を理解したところで、ブランディングを成功に導くポイントについて解説します。
過去の成功事例を参考にして踏襲するだけでは、地域ブランディングは成功しません。地域の特性やアイデンティティを活かしたブランディング戦略の立案・実行が求められます。観光資源のほか、独自の食・伝統工芸・文化・歴史やお祭りなどの地域資源を発掘して、差別化を図りましょう。
地域ブランディングは、商品やサービスの開発・提供にとどまりません。消費者がその地域でしか味わえない体験型コンテンツも、観光客を呼び込める地域ブランドの一つとなり得ます。
地域ブランディングを成功に導くには、3Rを意識する必要があります。3Rとは、「つながり(Relevance)」「関係構築(Relationship)」「評判形成(Reputation)」の3つの単語の頭文字です。地域ブランディングにおいては、行政・住民とターゲットとなる消費者や観光客の三者間の3Rを意識しましょう。
地域ブランディングは、商品やサービスの開発・提供にとどまりません。消費者がその地域でしか味わえない体験型コンテンツも、観光客を呼び込める地域ブランドの一つとなり得ます。
行政・住民・ターゲットとなる消費者の三者間でブランド構築を図るには、デジタル技術の活用が不可欠です。地域ブランディングにおいて、以下のような場面でデジタル技術を活用できます。
デジタル技術は人手不足の解消にも役立ち便利な一方、SNSの不適切な投稿による炎上やサイバー攻撃を受けるなどの運用リスクを考慮しなければなりません。ブランド価値を守るための適切なリスクマネジメントが求められます。
地域ブランディングを推進する際に、他の自治体の事例は大いに参考になるでしょう。本章では、地域ブランディングに成功している自治体の事例と、失敗事例をそれぞれご紹介します。
愛知県では、デジタルコンテンツの活用による地域ブランディングの成功を目指しています。代表例は、愛知県の観光・文化芸術・特産品などの地域資源を活用した動画配信を推進する「PLAY!AICHI プロジェクト」です。主に、以下のような取り組みをおこなっています。
・YouTubeなどの動画配信サービスにおけるプロモーション展開
・QRコードやAR 技術などを活用した視聴者の誘導
・ソーシャルメディアによる観光・文化芸術の魅力の情報発信
ICTを活用した文化芸術コンテンツの充実化
愛知県では、これらのデジタル技術の活用による地域ブランディングの確立に成功しています。
瀬戸内海に面している直島は、「島×生活×アート」をキーワードに地域ブランディングに成功しました。
1994年には年間約4万5千人だった観光客は、2019年には17倍にあたる約75万人に増加しました。直島に行かないと体験できない、そこにしかないアートが人気を呼び、欧米・中国などから多くの外国人観光客が訪れています(※1)。
※1)直島町観光協会 直島町観光入込客数(延べ人数)
日南市は住民にアンケートを実施して、重要度が高いにも関わらず満足度が低い項目を抽出。その結果、雇用環境の満足度が低いことが判明しました。10代~20代前半の若年層が市外の高校や大学への進学や就職時に市外に転出して、そのまま戻らないケースが多いのが、その一因だと考えられます。
データを分析した結果、求人倍率の中で事務職の有効求人倍率の低さが浮き彫りになりました。また、日南市統計書の年齢・男女別人口(人口ピラミッド)を見ると、20代の人口割合がほかの年代に比べると少ないことがわかります(※2)。
若者層の就業率を高めるために、日南市は女性の雇用促進や多様化する働き方に対応可能なIT企業の誘致を実施しました。
※2)日南市総合政策課 令和3年度版日南市統計書
熱海市は、かつては大型高級ホテルやリゾートマンションが立ち並び、多くの観光客が訪れる人気の観光地でした。その後、バブル崩壊や東日本大震災の影響を受けて観光客が激減します。
熱海ブランドの再確立を目指し自治体と民間が一体となって、地域情報ポータルサイトやSNSの開設とともに地域ブランディングに取り組みました。
2009年には、NPO法人「atamista(アタミスタ)」を設立。自治体と観光協会・NPO法人が協力して、体験交流型プログラムの「熱海温泉玉手獏(通称オンたま)」を開始しました。2013年には、自治体とJTB・観光協会で観光プロモーション事業「意外と熱海」を実施するなど、様々な取り組みをおこなっています。
「意外と熱海」は、「JTB地域パワーインデックス調査」からシニアよりも若年層の満足度が高いという結果を踏まえ、若年層をターゲットにプロモーションを強化しました。その結果、熱海を訪れる観光客は20代が最多となりました(※3)。
※3)熱海市 熱海市観光客実態調査2019年報告書
ある自治体では、住民への取り組みの周知が十分ではなく、住民の協力をあまり協力を得られずに地域ブランディングは失敗に終わりました。
商品・サービスの開発には地元企業と地域住民の理解・協力が不可欠です。地域一丸となって、皆が当事者意識を持つことで初めてブランディングを可能にし、地域活性化につながります。
ある自治体は、積極的な広報・PRイベントが功を奏してブームとなり、観光客が増えました。しかしながら、ブームは一過性のもので、その後観光客は減少しました。
地域ブランドの確立は一朝一夕でできるものではありません。一貫性と継続性のあるブランド構築を心がけて、一過性のブームではなくリピーターの獲得を狙いましょう。
地域ブランディングを成功に導くには、Webプロモーションを効率的におこなう必要があります。そこで、自治体のWebプロモーションに貢献できる広告配信サービス「まちあげ」をご紹介します。
「まちあげ」は、ユーザーのライフイベントに関連する「移住・旅行」などの需要に対し、誘致を含めた地域ブランディングのための施策を実施します。地方自治体のニーズや課題に合わせた、効果的なマーケティングが可能です。また、Webプロモーションを実施した結果をレポートで確認できるため、効果検証がしやすい点がメリットです。
「まちあげ」では、地域ブランディング施策の一環でSNS投稿した内容を、ほかのブログやニュースサイトに展開できます。また、Tver視聴時に流れる動画広告の掲載も可能で、投稿内容を広く拡散できます。
都市部への人口流出や少子高齢化が進む中、地域活性化のための重要な取り組みとして地域ブランディングが注目を集めています。
本記事では、地域ブランディングのメリット・課題のほか、地域ブランディングの進め方や成功に導くポイントについて解説しました。加えて、地域ブランディングを推進する際に参考になる、成功事例と失敗事例をご紹介しました。
他地域と差別化を図り、地域の魅力を発信する手段としてデジタル技術の活用も進んでいます。地域ブランディングにおけるPR手法として、プロモーション動画やWeb広告も有効です。
記事の後半では、地域ブランディングで必要なWebプロモーションに貢献するツール「まちあげ」をご紹介しました。地域ブランディングの強化を図り効果的なプロモーションを実施したい自治体のご担当者は、ぜひ導入をご検討ください。