2023年4月に訪日入国規制が撤廃され、7月の月間の訪日外国人観光客数は230万人を超えました(※1)。2023年8月10日には、中国から日本への団体旅行が約3年半ぶりに解禁され、さらなるインバウンド需要の増加が期待されます。
地方自治体としては、このインバウンドにおける中国市場にどう対応するかが重要な課題といえるでしょう。
中国人向けの観光プロモーションを成果につなげるためには、訪日インバウンドにおける中国市場の特徴や、中国特有のWebプロモーション手法など、様々な知見が必要です。
本記事では、訪日中国人の誘客成功に必要な基本的な情報や、Webプロモーションのための手法をわかりやすく解説します。自治体の観光や広報に携わる方や代理店のご担当者にとって有益な情報が満載です。ぜひ最後までご覧ください。
※1)日本政府観光局 訪日外客数(2023年7月推計値)
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中国人の訪日インバウンド市場は、「爆買い」ブームからコロナ禍による大幅な観光客の減少、そして2023年の各種規制解禁による回復に至るまで、様々な要因に影響を受けながら推移しています。
時系列に沿って、中国人の訪日インバウンドの変遷とその背景をみていきましょう。
コロナ禍以前、日本は「爆買い」する中国人観光客にとって注目の旅行先でした。2011年には中国の消費支出が日本を抜き、世界で2位になりました。中国における中間所得層の拡大や人民元の高騰などが、その要因といわれています。
しかし、2016年には徐々に状況が変わり始めました。円高、訪日リピーターの増加、中国政府による税制改正が「爆買い」の減少を招きます。特に、高級時計やゴルフ用品に課される税率が倍増し、これが売り上げを押し下げました。
コロナ禍の影響を受け、中国政府は新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するために「ゼロコロナ政策」を採用しました。この政策は、厳格な都市封鎖や出入国制限、ホテルや自宅での隔離など、強権的な手段をともなうものでした。この影響を大きく受け、訪日中国人観光客数は大きく激減します。
その後、2023年1月に中国政府は一部の出入国制限を緩和。それまで義務づけられていた入国者に対する隔離措置が廃止されました。
2023年2月以降、中国は国外への団体旅行を段階的に解禁し始めましたが、この当初の解禁リストには日本は含まれていませんでした。一方、日本は3月1日に、中国から日本への入国における水際対策を緩和。さらに、4月29日には中国を含むすべての入国制限の解除を含む水際対策を終了します。
この政策変更にともない、2023年3月以降、個人旅行における訪日中国人観光客数は加速度的に増加しました。
2023年8月10日、中国政府は約3年半ぶりに日本を含む78の国と地域への団体旅行を解禁すると発表しました。すでに2023年7月の訪日外客数は、2019年同月比で77.6%の約2,32万人に達し、中国を除いた場合には約103%に上っています(※1)。
それゆえ、日本への中国人団体旅行の解禁は、回復傾向にある日本の観光業にとって、さらなる追い風になると期待されています。
※2)日本政府観光局 訪日外客数(2023年7月推計値)
訪日インバウンドにおける中国人市場は近年、急速に成長しています。ここからは、中国人観光客の消費傾向や訪日目的、訪問地域の特性、旅行形態などの特徴についてご説明します。
中国最大級の旅行メディア「馬蜂窩(マーフォンウォー)」を手掛けるインタセクト・コミュニケーションズのアンケート調査によれば、中国人の訪日目的の1位は観光です(※4)。
次いで、「日本食を食べたい」という意見が2位、「買物をしたい」が3位という結果でした。
かつての「爆買い」のイメージよりも、観光地での体験が主な訪日目的であることがみてとれます。
中国人観光客が訪日する際にどの地域を選ぶかは、様々な要因に影響されます。
東京を選ぶ方々は多彩な観光地とショッピングエリアが主な目的で、祭や花火大会などのイベントも人気の要因です。富士山と箱根は、その象徴的な自然美や温泉の人気が高く、東京・箱根や富士山周辺・名古屋・京都・大阪を周遊するルートはゴールデンルートとされています。
また、中部地方の愛知県・岐阜県・富山県・石川県を南から北へと縦断する観光ルートは龍に見立てて「昇龍道」と呼ばれ、中国人観光客に注目を集めています。歴史と自然、そしてカニや和牛など地域ごとの特産物が人気です。
そのほか、北海道や沖縄も依然として高い人気を誇っています。
それぞれの地域が独特の風情や文化、特産物で中国人観光客に多様な魅力を提供しています。
中国人観光客の訪日インバウンド市場における旅行形態は大きく分けると、個人旅行(FIT)と団体旅行の2種類です。
FIT(Foreign Independent Tour/Traveler)とは、個人で手配する海外旅行、また海外旅行者を指します。個人旅行は、訪日ビザ取得条件の緩和や口コミによる情報拡散が影響し、増加傾向にあります。今後ますます、個人旅行とリピーターが増加すると予測されています。
一方、団体旅行にも一定の需要は存在し、中国国内でも言葉の不安などの理由から団体旅行が主流という地域もあります。
※3)日本政府観光局 外国旅行の動向(2022年)
※4)インタセクト・コミュニケーションズ株式会社プレスリリース 中国人観光客 引き続き「爆買い」より「観光」に関心
中国は日本の観光産業において重要な市場であり、その巨大な人口と経済力は無視できない存在です。その一方、中国向けのインバウンドプロモーションを成功させるには、中国独自のインターネット環境やWebプロモーションの特徴を理解する必要があります。
中国ならではの環境や事情に合わせて戦略を構築しなければなりません。
ここからは、中国市場に特化した効果的なプロモーション手法について詳しく解説します。
中国のインターネット事情はほかの国と大きく異なるため、中国人観光客向けのプロモーションには、独自の手法が求められます。
特筆すべきは、「グレートファイアウォール(金盾)」と呼ばれるアクセスブロッキングシステムです。グレートファイアウォールにより通信の自由が規制されているため、中国では一部の外国のウェブサイトやサービス、例えばInstagramやFacebookなどは使えません。
それでも、中国の人口約14億人のうち約68%、すなわち約10億人の中国人がSNSを利用しています。(※5)したがって、中国人向けのプロモーションにはSNSの活用は非常に有効な手段といえます。
※5) DATAREPORTAL DIGITAL2022
中国向けインバウンドのプロモーションには、SNSプラットフォームが重要な役割を果たしています。中国人観光客に人気のあるSNSの特性を理解し、それに適した戦略を展開しましょう。
微博(Weibo)は、いわゆる「中国版Twitter」または「中国版Facebook」として知られている人気の高いSNSプラットフォームです。月間アクティブユーザー数は5億9,000万人を超えます(※6)。特に、通常のSNSプラットフォームがアクセス制限されている中国において、微博は観光地の情報発信や認知度向上に役立っています。
微信(WeChat)は、一般的に「中国版LINE」として親しまれているSNSアプリです。月間アクティブユーザー数は13億人を超え、中国人の日常生活に深く浸透しています(※7)。
特に注目すべきは、一対一でのコミュニケーションが容易におこなえるクローズドな環境が提供されている点です。この特性により、公式LINEアカウントやメールマガジンと同様に、効果的なマーケティング戦略が展開できます。
小紅書(RED)は多様な機能を有するSNSであり、「中国版Instagram」とも称されます。投稿にECサイトへのリンクを組み込むことができるため、「Amazon」に近い側面もあるといえます。また、観光地やサービスをビジュアル重視で紹介することができるため、インフルエンサーを活用することで、効果的なマーケティングが可能です。
抖音(TikTok)は、短い動画コンテンツを中心としたSNSで、全世界で大きな成功を収めています。月間アクティブユーザー数が10億人を超えるなど、多くの方々に愛用されています(※8)。特に注目すべきは、TikTok独自のアルゴリズムにより、特定のターゲット層に高い精度で動画を届けることができる点です。観光業のマーケティング戦略において不可欠な媒体といえるでしょう。
「哔哩哔哩(bilibili)」は、しばしば「中国版YouTube」とも称される動画投稿プラットフォームです。また、コメントが動画上を横切る独特の形式から、日本の「ニコニコ動画」にも例えられます。bilibiliは、TikTokと比較すると、長尺の動画も容易にアップロードできるのが特徴です。観光地の魅力を多角的に発信したい場合には、効果的なプラットフォームとなりうるでしょう。
快手(Kuaishou)は、月間アクティブユーザー数6億5,000万人以上を誇るショートビデオSNSです(※9)。快手はTikTokと異なり、主なターゲットは地方都市や農村部の住民といわれています。この特性により、観光のマーケティング戦略においても、TikTokとは異なる顧客層にアプローチできる点がメリットです。
※6,7,8,9)DATAREPORTAL GLOBAL SOCIAL MEDIA STATISTICS
KOLとは「Key Opinion Leader」の略称で、中国人に対して強い影響力を持つインフルエンサーを指す用語です。KOLは、中国市場におけるインフルエンサーマーケティングのカギとされています。WeiboやWeChatなどで多くのフォロワーを有し、特定のターゲット層への影響力が非常に大きいのが特徴です。
訪日中国人に向けての観光プロモーションにKOLの活用は非常に効果的であり、観光地への訪問需要を高める有効な手段といえます。
中国向けのインバウンドプロモーションにおいて、SEO(Search Engine Optimizationの略で検索エンジン最適化を意味する)や広告の活用は非常に重要です。
特に、中国国内で主要な検索エンジンである百度(Baidu)に最適化するアプローチは不可欠です。検索エンジンの言語特性や地域性を考慮し、現地でよく検索されるキーワードを用いることで効果的なSEO対策ができます。
また、リスティング広告やバナー広告を検討する場合は、広告のリンク先となるサイトに対して、中国独自の審査基準があるため注意が必要です。
その際、Webサイトは中国でアクセス可能な形にし、WeChatやWeibo、百度地図に対応することで、ユーザーエクスペリエンスを高めましょう。
中国から日本へのインバウンドが急増する中で、地方自治体にとって中国市場の影響力は無視できない存在です。ここでは、中国向けインバウンドにおける今後の展望と課題についてご紹介します。
中国向けのインバウンド対策として、特に考慮すべきは受け入れ環境の充実です。
無料Wi-Fiが利用できる場所を増やし、その情報を積極的に発信することで、観光客の利便性を高めましょう。
また、都市部において日本の公共交通は非常に発展しているものの、その複雑さから訪日外国人にとっては利用のハードルが高いと感じる場面も少なくありません。この点も考慮に入れ、多言語の交通案内や通訳サービスを強化し、観光客のストレスを軽減しましょう。
さらに、中国語での各種表示や情報提供を増やすことで言語の障壁を減らし、観光客がより楽しい時間を過ごせるような工夫が必要です。これらの取り組みが口コミの高評価を生み、さらなる観光客の増加につながるでしょう。
中国向けのインバウンド誘客において、「コト消費」、すなわち体験を重視する消費が今後のキーポイントとされています。特に地方においては、地元の朝市の訪問や生け花、農村体験など、その地域ならではの文化や自然を堪能する活動が中国人観光客に受け入れられています。
このような体験型の消費は、単なる観光以上の価値を提供し、消費の拡大にも寄与するでしょう。
中国向けインバウンド誘客における今後の展望として、異文化交流や国際理解を目的とした教育旅行の需要に注目が集まっています。これは特に、観光名所が少ない地方自治体にも新たなチャンスを生む可能性があります。なぜなら、日本全体が持つ「街の清潔さ」や「公共道徳の高さ」などの要素は、観光名所の有無にかかわらず強く訴求できるためです。
したがって、これらの特徴をうまくPRすることで、新たな訪日客層を獲得できる可能性が高まるでしょう。
中国人観光客の、旅行ニーズが多様化しています。以前は東京・京都・大阪など「ゴールデンルート」に沿った主要都市を巡る団体旅行が一般的でしたが、近年は個人旅行(FIT)も増加しており、旅行スタイルも多様化しています。
特に訪日リピーターにおいて、パッケージツアーでは訪れることが少ない観光地や体験への興味が高い傾向があります。従来の手法や需要に固執せず、中国人観光客の多様なニーズを把握するよう心がけましょう。
多様化する訪日中国人観光客のニーズに対応するためには、その土地ならではの魅力向上と価値の発信が非常に大切だといえます。地域の観光資源を見直し、効果的に情報発信をおこないましょう。
また、それぞれの地域の魅力向上と観光客の分散は、オーバーツーリズム解消の一手にもなりえます。オーバーツーリズムとは、特定の観光地に観光客が集中し過ぎて、地域住民や自然環境に悪影響を与える状態を指す用語です。
観光庁が地方自治体向けに実施したアンケートによれば、いずれの地方自治体も旅行者の増加による課題を認識しており、特に混雑やマナー違反が問題視されています。近年、観光庁がその対策に向けて「持続可能な観光推進本部」を設置するなど、対策を講じています。
中国向けのインバウンド誘客において、各自治体が様々な取り組みをおこなっています。具体的な自治体の取り組み事例を2つご紹介します。
大阪府は中国のOTA(オンライン旅行代理店)「フリギー」と協業し、中国からの観光客を増やすための戦略的な協力関係を築いています。この協業の主な焦点は、食文化・観光スポット・スポーツ施設など、大阪の多彩な観光資源を活用した旅行商品の開発と販売です。
さらに、KOLによるライブ配信を通じて大阪のブランド価値と魅力を高め、更に多くの中国人観光客を呼び込む計画を進めています。
青森県は、中国向けインバウンド誘客における戦略の一環として、中国の人気SNSプラットフォーム「Weibo(微博)」で活発な情報発信をおこなっています。
青森県の公式Weiboアカウントは130万人を超えるフォロワーを有しており、観光客からの「積雪の状況はどうか」「花見の開花時期はいつか」といった質問にも対応しています。
青森県のほかにも、Weibo公式アカウントを持つ自治体は多数あり、中国人観光客に向けた積極的な情報発信に取り組んでいることがわかります。
全国の自治体が、中国からの観光客を呼び込むために様々な施策を展開しています。
ここからは、その成果を最大限に高めるWebプロモーションツールとして「Cosmose Media(コスモス メディア)」をご紹介します。
「Cosmose Media」は、Cosmose,Incが提供する広告配信プラットフォームです。Cosmoseが保有する約10億UDから取得する中国人の位置情報データをもとに、広告主の商圏を捉えたプロモーション支援を行なっております。
マイクロアドはCosmose Mediaとの連携により、自治体の旅ナカ施策におけるインバウンドプロモーション支援として、日本国内の特定エリアを訪れている中国人を指定した広告配信を開始しました。
また、Cosmoseのもつ約10億ユニークデバイス(UD)から取得する、中国の位置情報データを活用した効果計測を行うことで、広告効果を可視化することが可能になります。
従来の自治体の中国向けインバウンド施策においては、いくつかの課題が存在していました。
その一つがターゲティング精度の低さです。
これまで位置情報の取得精度の観点から、訪日中国人に対し、都道府県単位でエリアを指定した広告配信を行うことができませんでした。
次に、中国内の法規制と媒体制限によって、出稿先が限定される課題がありました。
一方「Cosmose Media」では、中国人が日常的に利用する多様なアプリやプラットフォームにも広告を配信できます。
※両社の協業により、日本企業の広告出稿が可能なパッケージ商品を開発
また、中国人向けの広告配信の詳細な効果計測が困難でした。
これに対し「Cosmose」の保有する、高精度の位置情報を活用することで、プロモーション前後を比較した、訪日中国人の流通小売店舗への来店率計測や分析、レポーティングを行うことが可能になりました。
また、自店舗に訪れた訪日中国人が、他のどの店舗へ訪れているかなどの併店分析も可能になります。
このように、自治体の中国向けインバウンド施策に「Cosmose Media」を活用することで、効果的な広告配信とその後の計測・分析が可能です。
より多くの訪日中国人を呼び込むために、「Cosmose Media」を活用したマイクロアドのインバウンドプロモーション支援サービスをぜひご活用ください。
中国からの団体旅行が再開された今、地方自治体が中国向けインバウンドの誘客に成功するためには、効果的なWebプロモーションとターゲティングが不可欠です。この記事で紹介した情報と手法を活用して、訪日中国人観光客の誘客を成功させましょう。
マイクロアドが提供する「Cosmose Media」を活用したサービスは、自治体の中国向けインバウンドの施策をWebプロモーションの分野においてサポートします。どうぞお気軽にお問い合わせください。