中部地方は、古くからの歴史と先進的な文化、美しい自然の共存する魅力的なエリアです。訪日外国人旅行者の増加にともない、どのようにこの地域の豊富な観光資源を最大限に活かし、持続可能なインバウンド対策をおこなうのかが課題となっています。
本記事では、中部地方の各県の特色とそれらをつなぐ広域観光戦略を紹介し、インバウンド誘致を成功へ導くためのポイントを解説します。中部地方の魅力的な観光資源を深堀りしながら、インバウンド誘客成功のカギを探りましょう。
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中部地方におけるインバウンドの動向には、一体どのような傾向がみられるのでしょうか。
まずは、中部地方の中から、東海エリアにおける観光地の知名度や訪日外国人旅行者の特徴、さらに旅行の傾向を詳しく解説します。
東海エリアは、「富士山」を筆頭に多くの魅力的な観光地を抱えています。【東海地方版】 DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査によると、訪日外国人旅行者における「富士山」の知名度は54.7%にのぼります。そのほか、「名古屋」「飛騨/高山」「紀伊半島/高野山/熊野古道」は訪日外国人旅行者にとって、訪問希望率が高いエリアとなっています。
一方で、「名古屋」の知名度は10大都市の中で7位、広域エリア「中部/東海」の知名度は6.6%と決して高くありません。それゆえ、中部地方におけるインバウンド施策は、広域観光のプロモーションの強化がカギといえます。
上述の「アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査」によると、東海エリアを訪れる外国人旅行者の多くが、以前に日本を訪れた経験がある方です。特に「飛騨・高山」や「伊勢志摩・伊賀」を訪れたいと希望する旅行者の7割以上が、リピーターです。
また。東海地方は、郷土料理・その土地の食材・歴史的建造物などに惹かれている訪日外国人旅行者が多いことがわかります。さらに、高収入層の訪問希望が多いのも特徴の一つです。
東海エリアの観光傾向は、地域ごとに異なる特色があります。例えば、「飛騨/高山」や「伊勢志摩/伊賀」は個人旅行を希望する割合が高く、「紀伊半島/高野山/熊野古道」においては、パック旅行の希望者が多いのが特徴です。訪問希望者の8割以上が温泉付きの日本旅館を望んでおり、Wi-Fi環境や多言語対応のニーズも高い傾向にあります。
また、日本の豊かな自然や文化体験に加えて、ウォーキングやスキー、スノーボードなどのアクティビティへの興味が高まっています。これらのニーズを満たす観光コンテンツとして注目されているのが「アドベンチャーツーリズム」です。アドベンチャーツーリズムとは、「自然」「文化」「アクティビティ」の3要素のうち2つ以上を取り入れた旅行を指す用語です。
加えて、最近の傾向として、東海エリアへの旅行希望者の8割前後が、旅行先や宿泊施設の選択において「サステナブルな取り組みがあるか」を重視しています。これは、旅行者・地域コミュニティ・環境・産業との持続的な調和が意識された観光の形式が求められていることを示しています。
このような取り組みを強化することで、サステナビリティに対する関心が高い旅行層への訴求が可能となり、東海エリアの観光の魅力をさらに高めることができるでしょう。
東海エリアに続いて、北陸エリアにおけるインバウンドの動向をみていきましょう。
ここからは、北陸エリアを訪れる外国人旅行者の特徴や傾向についてご紹介します。
DBJ・JTBFアジア・欧⽶豪訪⽇外国⼈旅⾏者の意向調査【北陸版】によると、北陸エリアの認知度は24.3%。台湾や香港からの観光客の約半数が「北陸を知っている」と回答しています。特に「立山黒部」や「金沢」は、台湾・香港から、「富山」は中国・香港からの観光客に人気があります。
台湾からの旅行者における北陸への訪問意向は26.5%を示し、香港からの旅行者では19.4%となっています。一方で、北陸の認知度は増加傾向にありながら、訪問意向はほとんど変わっていません。
欧州・米国・オーストラリアからの観光客は、北陸での滞在日数が長くなる傾向がみられます。また、香港や東南アジアからの観光客は、北陸の「食事」を訪問の理由に挙げる割合が高いことがわかります。
これらの特徴を把握したうえで、誘客施策を策定しましょう。
北陸エリアを訪れる外国人旅行者は、「自然や風景の見物」や「紅葉の鑑賞」「伝統的日本料理」「現地の食事」などに高い関心を示しています。そのほか、「史跡・歴史的建築物の見学」「温泉」などへの関心も高く、これらを観光資源として強化すべきです。
一方、「日本庭園の鑑賞」「日本文化体験」「伝統芸能」「伝統工芸」への関心は低い傾向にあります。また、「フルーツ狩り」やアウトドアアクティビティへの期待が高まっている点にも留意しましょう。
中部地方には多様な観光資源があり、各県においてそれぞれ特色のあるインバウンド対策を講じています。
ここからは、中部地方9県それぞれのインバウンド対策の事例をご紹介します。
愛知県は独自の観光資源を生かし、インバウンド対策を推進しています。その一例として挙げられるのが、戦国時代の武将や史跡を活用した「武将観光」です。武将ゆかりのイベント「サムライ・ニンジャフェスティバル」が開催されるなど、国内外の観光客を魅了しています。
さらに、県観光協会が運営する公式Webサイト「Aichi Now」を通じて、多言語での情報発信やSNS連携による誘客活動を積極的に展開。このサイトは、月間100万PVを突破し、スマートフォンからの閲覧者数では都道府県の公式観光情報サイトのうち全国5位にランクインした実績があります(※1)。
※1)愛知県 あいち観光戦略に基づく 観光振興施策の実施状況
「白川郷」や「飛騨の里」など、訪日外国人に人気のスポットを持つ岐阜県では、自然や伝統文化、匠の技の紹介など独特な体験を通じて、観光消費を促進しています。
2020年度には、「長良川」の鮎や「下呂温泉」などの地域特有の自然を活かしたエコツーリズムを含む新しい体験ツアー10本を造成しました。エコツーリズムとは、自然や歴史文化を体験し、学びながら、それらの保全にも責任を持つ観光のありかたです。県はこれらのツアーを、県公式のインバウンド向けWebサイト「VISIT GIFU」で販売しています。
また、外国語観光ガイドの育成も進められており、岐阜県の魅力を深く伝える「語り部」を増やすための研修が実施されています。
静岡県は自然豊かな観光地を活かしてインバウンド対策を強化しています。株式会社movの調査によると、静岡県内で人気の高い観光スポットとして「御殿場アウトレット」に続き「白糸の滝」や「富士山」などの景勝地が、上位に名を連ねました(※2)。このことからも、訪日旅行者の自然景観への観光ニーズが高いことが伺えます。
また、静岡県は観光PRの強化策として、4K・ハイビジョンの観光短編動画を制作し、自由にダウンロードできる形で映像素材を提供しています。これは、訪日旅行者のニーズに合った効果的な施策であり、県の魅力をより広く発信する一助となるでしょう。
※2)PRTIMES 【独自調査】インバウンド人気観光地ランキング静岡編
山梨県のインバウンド対策の特徴の一つは、果樹や山岳を生かした観光アプローチです。果物狩りやハイキング、日本文化体験を通じた観光プロモーションに注力しています。
スポーツを活用した観光も山梨の特色の一つです。特にサイクリングが盛んな台湾に向けて、フルーツラインコースや富士五湖満喫コースなどのアピールを積極的におこなっています。
さらに、都心部から近い立地を活かし、首都圏からのワンデートリップを推進。長期滞在の外国人観光客に日帰り観光を促進しています。山梨県は情報提供の面でも工夫を凝らしており、観光サイトで多言語対応の観光パンフレットを無料配布しています。
名所「松本城」を筆頭に、自然や歴史の魅力を持つ長野県は、特に欧米や豪州からの富裕層をターゲットに、質の高い観光体験を提供しています。
さらに、訪問者のサポートとして「NAGANO多言語コールセンター」を設置し、24時間21言語での通訳サポートを実現しています。
新潟県には、訪日外国人に人気の観光資源である温泉が多数点在しています。しかしながら、DBJ・JTBFアジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査によると、アジアや欧米豪の訪日外国人旅行者における新潟/佐渡の認知度は10%。この認知度の低さは、札幌の39%や福島の31%と比較しても顕著です。
認知度の低さを打破すべく、海外のインフルエンサーを招へいし、実際の観光地の魅力を紹介しています。2021年に新潟県湯沢町では、日本在住のシンガポール人インフルエンサー、チージーさんを招待。Facebookで新潟の魅力を伝えるライブ配信がおこなわれました。
富山県は、インバウンド向け観光公式サイト「Visit Toyama」をリニューアルし、モバイル端末からのアクセスがスムーズになりました。さらに、オンラインでの宿予約リンクを設けることで、サイト訪問者が迅速に予約へと進むことが可能となりました。また、ネイティブライターや県民ライターによるリアルな情報を提供しています。
富山県と長野県を結ぶ北アルプスの山岳観光ルート「立山黒部アルペンルート」は、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポンで最高評価を獲得(※3)。富裕層のターゲットに合わせてラグジュアリーホテルの誘致や観光施設の高付加価値化を進めています。
※3)訪日ラボ "訪日外国人向けミシュラン"最高評価の「立山黒部アルペンルート」そのワケは?堅実なインバウンド対策がカギ
石川県の中でも特に金沢市は、訪日外国人旅行者に広く認知され、人気を集めてきました。一方、加賀・能登エリアの魅力が十分に伝わっていない点が石川県の課題です。
このような課題を踏まえ、県はアジアや欧米豪からの旅行者をターゲットにインバウンド誘客に取り組んでいます。具体的には、現地旅行会社とのネットワーク再構築やインフルエンサーの招へい、北陸新幹線の利用促進などの施策を進めています。
さらに、県は「The Official Ishikawa Travel Guide」公式サイトのリニューアルを実施。石川県全域の歴史・文化・自然などの多彩な魅力を紹介すると共に、各地域の異なる魅力や特色を強調する内容で訪問者に情報提供をしています。
福井県は、英語での観光地案内動画をYouTubeチャンネル「英語でTRY!福井のおもてなし」を公開し、外国人向けの通訳ガイド育成を推進しています。
また、禅が息づく福井をアピールポイントとして「Zen, Alive. Fukui」というブランドを展開。フランスのパリで観光PRイベントを開催するなど、禅をテーマに福井県の魅力を世界に発信しています。
中部地方では、外国人旅行者の観光ニーズの多様化と、日本各地との競合を背景に、広域連携による誘客を目指すプロジェクトを立ち上げました。
ここからは、中部地方の広域観光施策「昇龍道プロジェクト」についてご紹介します。
「昇龍道プロジェクト」は、中部地方を中心とした9県(富山・石川・福井・長野・岐阜・静岡・愛知・三重・滋賀)が連携し、外国人旅行者の増加を目指す取り組みです。このプロジェクト名「昇龍道」は、9県が連なる地図上の形が、昇っていく龍の姿に似ていることから名付けられました。
「昇龍道プロジェクト」は、インバウンドにおける各県の知名度の低さを背景としています。各県が単独でプロモーションをおこなっても、効果は限定的です。このような課題を解決するカギとして広域的な連携の必要性が認識されました。
広域連携による最大のメリットは、訪日外国人旅行者の幅広い観光ニーズを、一つの広域ルートで包括的に満たせる点にあります。訪日外国人旅行者の平均泊数は 12.7日です(※4)。 滞在期間中に、広域を周遊して各地の観光スポットを訪れる傾向があります。
それゆえ、自然・文化・グルメ・歴史遺産・アクティビティなど多様な魅力を組み込んだ観光プランを提示できれば、旅行者の満足度を高めうるでしょう。
※4)観光庁 訪日外国人の消費動向(2023 年 1-3 月期)
中部地方を中心とした広域観光を促進し、旅行者の多様なニーズを満たすため、団体・個人双方に向けた、幅広い魅力を盛り込んだ周遊ルートの周知が進められています。
具体的には、各県知事を団長としたミッション団の中国や東南アジアへの派遣や、各国の旅行博への出展など、幅広いプロモーション活動を展開しました。
さらに、海外メディアやブロガーを日本に招へいし、「昇龍道」の認知度を向上させる施策を推進。加えて、多言語対応したWebサイト「SHORYUDO」を運用するなど、Webプロモーションにも力を入れています。今後もこの取り組みを強化し、より多くの外国人旅行者を迎え入れる計画です。
中部地方へのインバウンド誘客を促進するためには、Webプロモーションの効果的な活用が欠かせません。
ここからは、観光誘致のWebプロモーションに役立つサービス「インバウンドでまちあげ」についてご紹介します。
「インバウンドでまちあげ」は、マイクロアドとマイクロアド台湾が連携して提供するインバウンドプロモーションサービスです。
「インバウンドでまちあげ」では、台湾や香港にて日本の情報を収集・発信するメディア「Japaholic」を活用することで、情報収集源の確立を図れます。加えて、広告運用やSNS施策を組み合わせた多角的なプロモーションにより訪日外国人旅行者の誘客を推進することができます。
「インバウンドでまちあげ」では、訪日前の事前プロモーションだけでなく、訪日後における施策の効果測定に対するサポートも提供しています。
加えて、「Japaholic」の記事を通じて得られるユーザーの分析データや位置情報を基に、実際の来訪者数や各自治体における消費額などの詳細な調査が可能です。これにより、プロモーション活動の効果を可視化できます。
中部地方には歴史や自然、グルメなど、多種多様な観光資源が点在しています。それゆえ、中部地方のインバウンド動向を理解したうえで、広域周遊ルートの周知とWebプロモーションを実施することが誘客成功のカギといえるでしょう。
マイクロアドの「インバウンドでまちあげ」は、インバウンド誘客のための効果的なサポートをお約束します。ぜひ、お気軽にお問い合わせください。