「関西地方を訪れる訪日外国人旅行者の具体的な需要や好みを知りたい」
「大阪・関西万博に向けてインバウンド誘客に力を入れたいが、どのような施策を講じればよいのかわからない」
このような悩みを抱える代理店や自治体担当者の方も多いのではないでしょうか。
訪日外国人旅行者の特性や需要、嗜好を把握することにより、インバウンド誘客に効果的な施策を策定できます。
本記事では、関西地方を訪れる訪日外国人旅行者の特性や需要を解説しています。
2025年開催予定の大阪・関西万博についての説明と、その後の影響についても触れているので、関西地方のインバウンド誘客に悩んでいる方はぜひ最後までご覧ください。
目次を表示
関西地方は、多くの訪日外国人旅行者が訪れる歴史と文化が豊かな地域です。大阪や京都・奈良・神戸などの都市を有し、それぞれが異なる特色と魅力を持っています。
ここでは、関西地方における訪日外国人旅行者の特性を詳しく解説します。
関西を訪れる訪日外国人旅行者を国や地域別に見ると、2023年4月時点で入国者数が多いのは、韓国・台湾・香港・中国・タイ・アメリカの順です。
関西地方を訪れる訪日外国人旅行者の延べ宿泊者数は、2023年4月時点で約271万人、2019年同月比でマイナス21.6%でした。関東地方の訪日外国人旅行者の延べ宿泊者数が2019年同月比でプラス7.4%であるのと比べると、関西地方はコロナ前の水準に回復していないことがわかります(※1)。
※1)近畿運輸局観光部 関西の観光統計について~2023年4月分~
関西にある空港の中で、唯一国際線を有する空港が大阪府にある「関西国際空港」です。海外から関西地方を訪れる場合は、主なアクセスポイントである関西国際空港を経由し、そこから各訪問先へと移動するという流れが一般的です。
2019年の訪日外国人旅行者の訪問先として、関西地方で一番訪問率が高いのは大阪府で38.6%、これは全国で2番目です。次いで京都府が27.8%、関西地方で3番目に高いのは奈良県で11.7%となっています(※2)。
奈良県を訪れる外国人旅行者は多いものの、そのうち奈良県に宿泊する割合は14%にとどまっています(※3)。つまり、奈良県の訪問者のほとんどが他の府県に宿泊しているという状況です。
※2)JNTO 都道府県別訪問率ランキング
※3)国土交通省 近畿運輸局 観光部 関西における主要ゲートウェイを拠点とした外国人観光客動向調査事業(ヒアリング)
2019年に日本政策投資銀行および日本交通公社が実施したアンケートによると、アジア全体では、訪日前の情報収集方法として下記の3つが多く挙げられています(※4)。
特に台湾では、個人ブログを重要視する傾向が強いのが特徴です。一方、香港ではSNSからの情報収集をおこなっている方が多いという結果が出ました。
また、欧米とオーストラリアでは、日本政府観光局のホームページや旅行会社のホームページから情報を収集している方の割合が約4割にのぼります。
上記の情報から、国や地域によって情報収集の方法に異なる特色があることがわかります。
※4)日本政策投資銀行 関西のインバウンド観光動向
関西地方を訪れる訪日外国人旅行者が、どのような期待を抱いて旅行先を訪れるのかを知ることは、インバウンド誘客において重要です。
ここでは、関西地方における訪日外国人旅行者の需要についてご紹介します。
観光庁の調査では日本を訪れる訪日外国人旅行者が、訪日前に期待していたこととして挙げた割合が最も高いのは「日本食を食べること」。その割合は、78.3%にのぼります(※5)。
関西地方の食文化は、古くからその多様性と独自性が高く評価されてきました。特に、関西にはたこ焼きやお好み焼きなどのストリートフードから高級料理まで幅広い食の選択肢があり、訪日外国人旅行者にとっても大きな魅力となっています。
その土地ならではの文化と風土を感じられる地元の食材を活かした料理は、外国人旅行者にとって新たな発見や体験となりうるでしょう。
訪日外国人旅行者の35.4%が、訪日前に期待していたこととして「自然・景勝地観光」を挙げています(※6)。関西地方は、歴史的な名所や文化財だけでなく、美しい景勝地が多いことでも知られています。
例えば、京都の嵐山では四季折々の美しい風景を楽しむことが可能です。特に、紅葉の季節には多くの訪日外国人旅行者で賑わう観光地としても有名です。
また、奈良県には世界遺産の東大寺・興福寺・春日大社を有する奈良公園などがあり、自然と歴史が融合した美しい景色を堪能できます。
加えて、関西地方は各地で様々なアクティビティを楽しむことができます。
例えば、紀伊半島は海岸沿いのドライブやダイビング、そして登山など、アウトドア好きにはたまらないスポットが点在しているエリアです。和歌山県の熊野古道は、世界遺産にも登録されており、歴史と自然を共に感じられるハイキングコースとして人気です。
訪日外国人旅行者が訪日前に期待していたこととして、19.9%が「日本の歴史・伝統文化体験」と回答しています(※7)。
関西地方は、日本の歴史と文化が深く根付いている地域です。例えば、京都の古い寺院や神社・奈良の大仏・姫路城など、歴史的な名所が数多く存在しています。それぞれに際立った特徴や独自の魅力がある点も、訪日外国人旅行者を引きつけるポイントです。
※5,6,7)国土交通省 観光庁 訪日外国人の消費動向
食文化の多彩な選択肢や美しい自然環境を有する関西地方ですが、インバウンド誘客における課題も存在します。
ここでは、関西地方のインバウンド誘客における課題を解説します。
下記表は、2023年4月の都道府県別外国人延べ宿泊者数と、1人1回あたりの旅行消費者単価を示したものです。
都道府県 |
宿泊者数(※8) |
1人1回当たり旅行消費単価(※9) |
大阪府 |
1,305,630 |
82,498 |
京都府 |
1,209,180 |
45,259 |
兵庫県 |
102,300 |
21,159 |
和歌山県 |
46,470 |
26,445 |
奈良県 |
25,550 |
7,453 |
滋賀県 |
17,650 |
7,009 |
上記の表から、大阪・京都とそれ以外の県で、宿泊者数に大きな偏りがあることがわかります。そのため、大阪・京都以外への宿泊誘導が関西地方のインバウンド誘客における課題です。
また、大阪と京都で宿泊者数はそれほど変わらないのにも関わらず、旅行消費単価は大阪が京都の約1.8倍です。さらに、滋賀や奈良の消費単価は、大阪の10分の1以下にとどまります。
大阪以外の地域では、観光消費額を増やすために、地域資源をより一層活用し、観光地としての魅力を強化する必要があります。関西広域で連携し、観光地としての魅力を高めるなど、受入体制の整備も重要なポイントです。
京都は紅葉シーズンなどに観光客が多く訪れることで、地元住民の生活や観光客自身にも悪影響を及ぼすオーバーツーリズムの課題も挙げられます。具体的には、観光客による混雑やごみのポイ捨て、民泊の増加による騒音などが問題視されています。
さらに、京都市内の地価や家賃の急激な上昇など、住民生活に支障をきたすような問題も発生しており、早急な対策が必要です。
※8)近畿運輸局観光部 関西の観光統計について~2023年4月分~
※9)国土交通省観光庁 訪日外国人消費動向調査
関西地方に訪れる訪日外国人旅行者の国や地域に偏りがあることも課題として挙げられます。訪日外国人旅行者の70%以上を東アジアが占めています(※10)。それゆえ、欧米からの旅行客の呼び込みが急務です。
欧米からの訪日外国人旅行者数を増やすには、欧米地域の旅行者のニーズを把握し、ターゲットを絞った効果的なプロモーション展開が求められます。
欧米から訪れる旅行者は東アジアから訪れる旅行者に比べて、日本の歴史や伝統文化の体験に期待している割合が高い傾向です。例えば、歴史的名所や神社仏閣で和装など伝統文化を体験できるイベントを実施すれば、誘客につながる可能性があるでしょう。
また、イベントなどを実施する際に、外国語対応を強化しておくことも重要です。言語による障壁を少なくできれば、イベント体験に対する満足度もアップして、高評価の口コミやリピーターが生まれるきっかけにもなりうるでしょう。
※10)国土交通省 大阪・関西万博に向けた関西観光アクションプランを策定しました
本章では、関西におけるその土地の特色を活かした施策への取り組み事例をご紹介します。
「水都大阪」と呼ばれている大阪市ですが、河川を活用した観光コンテンツの少なさを課題としていました。また、治水優先で建物のすぐ裏を河川が流れており、水辺は人が集まるような場所ではありませんでした。
そこで大阪市では、水上観光を活用した取り組みを開始し、地域活性化へとつなげています。パンフレットや観光誌への広告出稿、メディア取材などで情報発信をおこなっており、特にSNSでの発信に力を入れています。
様々なクルーズやボートの企画をおこない、日本人観光客だけでなく、外国人観光客の増加にも成功しました。
和歌山県田辺市は、台風による暴風雨と前線による集中豪雨が多く、水害や土砂崩れが起きやすい地域です。被害によっては、観光客の数に影響を与える場合もあります。
さらに、人口減少と高齢化の影響で観光業界で働く方々の数が減り、従業員の平均年齢が上昇しているという問題が生じていました。
上記の課題を解決するために、「田辺市熊野ツーリズムビューロー」を設立しました。持続可能な観光地づくりのために、外国人目線での情報発信や環境整備に力を入れています。
特に訪日外国人旅行者の誘致に力を入れ、世界遺産でもある熊野古道を「巡礼」や「トレイル」としての観光資源として再定義しました。そのうえで、欧米やオーストラリアを主なターゲットとして積極的なプロモーション活動を展開しています。
ビューローの取り組みにより、熊野ブランドが確立され、インバウンド需要が高まっており、訪日外国人旅行者は増加傾向にあります。
兵庫県豊岡市にある城崎温泉は、古くから関西の湯治場として人気があり、7つの外湯と70軒以上の旅館や土産物店が集まる温泉地です。しかしながら、労働力不足、旅館の廃業、老朽化した木造建築の維持など多くの課題に直面していました。
これらの課題に対応するため、欧米・豪州からのインバウンド観光客をターゲットに、外国語対応の予約システムや情報センターの設置、人材育成などが進められました。加えて、柳並木のライトアップやレンタサイクル、湯めぐりバスなどの環境整備がおこなわれています。
その結果、オフシーズンでも外国人観光客の来訪が増え、ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン二つ星を獲得しました。さらに、地域観光DX基盤の整備や、豊岡演劇祭との連携による体験観光プラットフォームの設立など、地域全体での取り組みが進んでいます。
関西観光本部・山陰インバウンド機構・四国ツーリズム創造機構・せとうち観光推進機構の4者が、日本で初めて広域連携DMOのマルチ連携協定を締結しました(※11)。
上記4者は、2023年5月から広域エリアを一体として、観光促進に取り組んでいます。
DMO(観光地域づくり法人)とは、地域の経済力を高め、地域内での誇りと愛着を育むための組織です。明確なコンセプトに基づいた観光地域づくりを実現するための戦略策定や、戦略を実施するための調整機能も備えています。
歴史的・文化的なつながりの強い4者の連携により、西日本にある魅力的な観光資源を活かした観光ルートの形成やテーマツーリズムの創造が期待されています。
※11)関西観光本部 ~Greater WEST JAPANを目指して~ 関西観光本部、山陰インバウンド機構、四国ツーリズム創造機構 及び せとうち観光推進機構が連携協定を締結
「大阪・関西万博」は、大阪港の「夢洲(ゆめしま)」という人工島で2025年に開催される予定の国際的なイベントです。「大阪・関西万博」への公式参加を表明している国と地域は153か国・地域、国際機関は8機関(※12)、予想来場者数は約2,820万人を見込んでいます(※13)。
万博開催後は、後述の大阪IR構想によって様々な商業施設が誘致される予定です。
※12)公益社団法人2025年日本国際博覧会協会 新たに11か国から大阪・関西万博への公式参加が表明されました
※13)2025 年日本国際博覧会来場者輸送対策協議会 大阪・関西万博 来場者輸送具体方針(アクションプラン)初版
一般財団法人「アジア太平洋研究所」の研究によると、大阪・関西万博の開催によって予想される経済効果は2〜3兆円にのぼると予想されています(※14)。
高い経済効果が予想される理由として、以下が挙げられます。
また、 大阪・関西万博の開催により、大阪府だけではなく周辺府県の経済効果も相乗的に高まると予想されており、関西全域にとって重要なイベントです。ただし、これらはあくまで予測であり、実際の結果がどうなるかは多くの要因に依存します。
※14)一般財団法人 アジア太平洋研究所 拡張万博の経済波及効果:UPDATE
大阪・関西万博の開催を最大の好機と捉え、関西の観光・交通の復活に向け、中長期のビジョンに基づいた前向きな取り組みが期待されています。
近畿地方整備局・近畿運輸局・関西観光本部の3者は、万博の賑わいを大阪・関西の賑わいにつなげ、さらに全国へとつなげるプランを策定しました。「大阪・関西万博に向けた関西観光アクションプラン」と命名されたこの取り組みは、「住んでよし、訪れてよし」の観光地域づくりを目指しています。
プランの実現に向け、「テーマとストーリー」「人材」「情報」「交通」の4つの視点から地域をつなげることで、観光政策と交通政策を一体的に推進します。
本章では、大阪・関西万博の跡地に開設される予定の大阪IRについて、概要や期待できる効果、インバウンド誘客への影響を解説します。
「IR」とは、Integrated Resortの頭文字で、統合型リゾートを意味する言葉です。「大阪IR」は、大阪・関西万博跡地に建設される予定の施設名称で、カジノやホテル、遊園地などを有する統合リゾート施設を指します。
民間事業者が設置し運営するもので、大阪府や大阪市は、IRの整備や運営には携わりません。民間ならではの自由な発想で、ビジネス客やファミリー層など幅広い層が昼夜を問わず楽しめるようなサービスが提供される予定です。
IRの開業時期は、2029年秋〜冬頃が想定されており、日本初のカジノ施設が誕生する見通しです。
IR施設の建設時において、経済波及効果は約1兆5,800億円、雇用創出効果は約11.6万人、近畿圏での調達額は約8,800億円を見込んでいます。
IRが開業したあとも、毎年の経済波及効果は約1兆1,400億円、雇用創出効果は約9.3万人、近畿圏での調達額は約2,600億円と予想されています。また、IR施設における新たな雇用者数は約1.5万人の見込みです(※15)。
そのほかにも、観光客の増加による経済効果や、インフラ整備による地域の活性化も期待されています。
※15)大阪府 よくある質問 Q IRによって、地域にどのような経済効果がもたらされるのですか。
大阪IRは、カジノをはじめ、ホテルや会議施設やエンターテイメント施設など、様々なアトラクション施設を一つの場所で提供できます。そのため、訪日外国人旅行者の流入に大きな影響を与えるでしょう。
このプロジェクトにより、大阪における観光体験がより多様化し、新たな観光需要が生まれる可能性が非常に高いと期待されています。また、施設内のショッピングモールやレストランは、日本の文化や商品を幅広く紹介できる場にもなり、訪日外国人旅行者の消費促進にもつながります。
さらに、大阪IRは大阪湾エリアに設立される予定です。観光地として人気の高いニバーサルスタジオジャパンの近くに立地するため、2つの施設による相乗効果も期待されています。
万博やIRで見込まれる観光客数の増加に合わせ、大阪近郊エリアにおける効果的な観光施策を実施できるかどうかが、今後のインバウンド誘客の鍵となるでしょう。
インバウンド誘客に有効なサービスの一つに、「インバウンドでまちあげ」が挙げられます。「インバウンドでまちあげ」は、香港・台湾からの訪日観光客の自治体への誘客を支援するプロモーションサービスです。
香港や台湾在住で日本への旅行を検討している方へ、魅力的な情報を効率的に届けられます。また、自治体の情報を閲覧した方が住む県や市への来訪計測もおこなっており、想定消費額の算出も可能です。
さらに、台湾女性向けメディアやSNSを用いた中国語での発信もできるため、より多くのターゲットに情報を届けられます。
本記事では、関西地方のインバウンド誘客における特徴や課題、実際の施策をご紹介しました。
関西地方では、2025年に開催予定の大阪・関西万博や、その後の大阪IRが今後のインバウンド需要に大きな影響を与えると予想されます。訪日外国人旅行者を誘客するためにも、各地域が旅行者のニーズを把握し、ターゲットに合わせたプロモーションの実施が重要です。
訪日インバウンド増加に向けたWebプロモーションを実施する際は、ユーザー分析や位置情報データの活用が可能な「インバウンドでまちあげ」の利用もおすすめです。訪日インバウンド増加を目指す代理店や自治体のご担当者様は、ぜひ本記事を参考にしてください。