観光庁が発表している2022年の宿泊旅行統計調査報告によると、地域ごとの年間延べ宿泊人数が少ないのは四国・沖縄・中国地方の順です。中国・四国地方は他地域に比べて宿泊客数が少なく、観光客誘致を目的に様々なプロモーションを実施しています。
中国・四国地方は、2018年に発生した西日本豪雨により、一時期は観光客が減少しました。これを受けて中国・四国地方の9県とDMOの3団体が連携し、中国・四国9県連携復興プロモーションを開始しました。DMOとは、Destination Management Organization(デスティネーション・マネージメント・オーガニゼーション)の略です。観光資源に関する知見があり、地域の関係者と一緒に観光地域作りをおこなう法人です。
本記事では、中国や四国地方における観光の現状や観光振興に向けた取り組みについて解説します。さらに、中国・四国地方の各県およびDMOでおこなわれている観光プロモーション事例をご紹介します。これから観光プロモーションの実施を検討しているご担当者は、ぜひ参考にしてください。
近年多発している豪雨などの自然災害によって、被害を受ける中国・四国地方は、災害時の支援体制の構築が必要なこともあり地域連携を強化しています。中国・四国地方の両地域をまたぐ広域連携も進んでいます。
観光庁が発表している宿泊旅行統計調査報告によると、2022年度の日本人観光客の延べ宿泊者数は4億3,396万人。そのうち中国地方は2,152万人で関東地方の約6分の1、四国地方は1,131万人で関東地方の約12分の1です。
2018年に発生した西日本豪雨は中国・四国地方に多くの被害をもたらしました。その結果、被害の少ない地域も含めて全体的に観光客が減少したため、広域連携による観光プロモーションを開始しました。
一般社団法人「中国経済連合会」は2023年度事業計画で、持続可能な地域づくりとして次の4点を掲げています。
面積の約8割を中山間地域が占める中国地方では過疎化が急速に進行しており、人口減少・高齢化の進展への対策と生活基盤の維持が必要不可欠です。地域の維持・活性化に向けて、ICTの活用による医療・交通等の課題を解決する取組みがおこなわれています。
今後、広域連携を進めて観光客を誘客するには、交通基盤の整備も欠かせません。観光客の誘客や災害に備えた交通ネットワークの構築を実行しています。
四国地方では、一般社団法人四国ツーリズム創造機構が、観光庁が2020年に発表した「日本版持続可能な観光ガイドライン(JSTS-D)に基づいた取り組みを推進しています。
香川県小豆島はオリーブオイルの産地として知られています。通常は廃棄されてしまう搾油後のオリーブのくずを乾燥し飼料に使用するほか、オリーブの剪定した枝葉を肥料として再利用しています。SDGsの目標を3つ掲げており、日本版持続可能な観光ガイドラインのJSTS-Dに係るモデル地区に選定されました。さらに、2022年には「世界の持続可能な観光地TOP100選」に選出されました。
中国・四国地方は観光だけでなく災害発生時の救助など様々な状況において、広域連携に取り組んでいます。ここでは、中国・四国地方の連携による周遊ルート形成促進事業と、代表的なDMOの取り組みについて解説します。
観光庁は訪日外国人旅行者を地方に誘客するために、複数地域の広域観光周遊ルートの形成計画を策定しました。中国地方と四国地方には「せとうち・海の道」・「スピリチュアルな島〜四国遍路〜」・「緑の道〜山陰」の3コースが設定されています。広域観光周遊ルートに認定されると事業に必要な経費の最大2分の1が支援されます。
せとうちDMOは、瀬戸内を囲む兵庫・岡山・広島・山口・徳島・香川・愛媛の7県が合同で観光産業活性化に取り組む組織です。瀬戸内の観光ブランド化を推進し、世界に通用する持続可能な観光地にするために設立されました。
上述の広域観光周遊ルートのうち「せとうち・海の道」は、瀬戸内の豊富な観光資源を活かし、欧米豪や東南アジアを対象市場に訪日外国人の誘客を目指しています。モデルコースとして次の3つが設定されました。
それぞれのコースごとに重点市場の国を分けてプロモーションをおこなっています。
四国ツーリズム創造機構は、2009年にオール四国の観光推進組織として誕生。2018年に一般社団法人となり、2019年に広域連携DMOとして登録されました。持続可能な観光への取組みを推進しており、様々なプログラムが用意されています。その中から2つをピックアップしてご紹介します。
うちわの素材も処分にコストのかかるオリーブの枝木・うどんのゆで汁・海洋ゴミの原因となる漁網を使用するなど、環境にも優しい取組みです。
城育は香川県にある丸亀城を教育的コンテンツに活用する取り組みです。歴史教育ではなく、城にはどのような建築技術や仕掛けが使われているのかを学べるコンテンツです。
2025年に開催される関西・大阪万博を見据えて、関西・中国・四国地方の4つのDMOが連携協定を締結しました。Greater WEST JAPAN(西日本広域周遊観光)を目指し、訪日外国人の誘客を促進します。協定を締結した団体は次のとおりです。
これらのDMOのほかに、日本国際博覧会協会や関西・中国・四国の経済連合会、航空会社・JRなどの交通関連会社が協力団体として連携しています。
ここからは、中国・四国地方の各県ごとの観光プロモーション事例をご紹介します。
鳥取県の事例として、松葉がにや鳥取和牛など鳥取ブランドの認知・価値向上を目的としたJR東海グループのキャンペーンが挙げられます。中京圏から鳥取県への誘客に加えて、鳥取のブランド蟹やブランド牛を名古屋の飲食店舗へ卸すための販路開拓を図ったキャンペーンです。
さらに、2023年2月には、鳥取の地域との関係人口の増加に向けた取り組みの一環として、鳥取県メタバース課を立ち上げました。AIアバター職員と日本語・英語でコミュニケーションを取ることも可能です。今後はメタバース空間を有効活用し、自治体の観光プロモーションにも役立てる構想を立てています。
島根県は、世界遺産の「石見銀山」や国宝「松江城」などの歴史文化財に恵まれているのが特徴の一つです。歴史文化財を活用して観光客を増やすために、VRアプリの制作や観光ガイドの養成などがおこなわれています。
隠岐諸島の海土町では、「ないものはない」というスローガンを宣言。ブランドサイトを開設し、離島から世界に向けて持続可能な社会に必要な価値観を発信し続けています。
鳥取・島根両県により設立された「山陰インバウンド機構」は「山陰」の魅力的な観光資源を外国人観光客にPRしています。山陰の認知度向上およびマーケティング調査を目的とした「縁の道〜山陰〜」のPR動画を作成。2023年12月現在、600万回以上の再生数を誇ります(※1)。
※1)San'in JAPAN San'in, Japan 4K (Ultra HD) - 山陰
岡山県には日本三名園の一つ「後楽園」、趣ある景観が楽しめる「倉敷美観地区」、造山古墳が有名な「吉備路」といった観光スポットが点在しています。また、「桃太郎のまち岡山」として2023年10月7日から2024年3月31日まで、「賑わう祭りと消えた桃太郎〜祝桃祭〜」と題した謎解きARイベントなどもおこなわれています。
そんな岡山県は、M-1グランプリのチャンピオン「ウェストランド」とキングオブコントのチャンピオンの「空気階段」の2組をメインビジュアルに「岡アツ!」というPRを展開。「いま、岡山がアツい!いま、岡山にアツまれ!」をテーマに、様々な分野で県出身者が活躍する岡山のPR動画を公開し、SNSキャンペーンなどを実施しています。
広島県には世界に誇れる宮島の厳島神社と広島平和記念公園の原爆ドームの2つの世界遺産があり、瀬戸内海やしまなみ海道など観光資源も豊富です。これらの世界文化遺産や瀬戸内海を核とした広域観光の推進と、情報発信の強化による「ひろしまブランド」の確立を目指しています。主な取組み内容は次のとおりです。
施策 |
概要 |
ひろしまブランドの確立 |
情報発信の強化および県内の2つの世界遺産や瀬戸内海をテーマにした広域周遊ルートの開発 |
地域の特色を活かした 観光地づくり |
観光資源のブラッシュアップおよび体験・感動型観光のメニュー化やルートづくり |
受入れ体制の整備促進 |
おもてなしの心を育む旅育の強化 |
国際観光の推進 |
東京・京都・大阪などのゴールデンルートを巡る観光客の誘致を促進 |
広島県は観光立県の実現を目指し、様々な取組みを積極的におこなっています。
山口県は秋吉台・錦帯橋・角島・元乃隅神社など観光資源が豊富な地域です。元乃隅神社はアメリカの放送局CNNにより「日本の最も美しい場所31選」に選ばれて以来、外国人の観光客も増加しています。
山口県は観光プロモーションの一環として、観光キャッチフレーズ「おいでませふくの国、山口」を掲げています。「ふく」は山口県特産のふぐがふくと呼ばれていることから名付けられました。
動画でのプロモーションもユニークです。福岡県北九州市と山口県下関市が共同で制作した本州と九州を結ぶ関門海峡のPR動画「COME ON!関門」は6年前の公開から現在も再生回数が伸び続けています。2023年12月時点での再生回数は、驚異の2億回を記録しています(※2)。
※2)北九州市観光情報ぐるリッチ北Q州 関門海峡PRムービー「 COME ON!関門!」
徳島県には、世界最大規模の「鳴門の渦潮」や世界の名画を陶板で再現する「大塚美術館」などの観光名所があります。
2021年には、鳴門エリアにおける交通の利便性と観光体験の向上を目指す観光型Maas「くるくるなるとデジタル周遊チケット」の実証実験がおこなわれました。Massとは、「Mobility as a Service」の略称で、目的地までのルートや移動手段をITの活用によって最適に組み合わせて、検索・予約・決済等を一括でおこなうサービスです。
また、徳島が世界に誇る伝統芸能「阿波踊り」の魅力を国内外に広く発信するためのプロモーション動画を公開。「四国コンテンツ映像フェスタ2022 特別賞」「第2回「デジタルとくしま大賞」企業賞の2つの賞を受賞しました(※3)。
※3)Fun!Fun!とくしま | 徳島市公式観光サイト 阿波おどり観光プロモーション動画が2つの賞を受賞
香川県の観光プロモーションで有名なのは、2011年におこなわれた「うどん県にようこそ」でしょう。香川県をアピールするため、「香川県は『うどん県』に改名しました」と宣言する特設ページをオープン。各メディアで連日取り上げられて話題を集め、うどん県の名称はすっかり定着しました。
また、2018年12月にはポケットモンスターのヤドンとうどんの語呂が似ているとして、ヤドンをうどん県PR団に任命しました。 2023年には「ヤドンといっしょ!香川2023」が開催されています。
愛媛県には、天守が現存している12城のうちの2つ、松山城と宇和島城があります。ほかにも道後温泉が観光地として有名です。特産品としては、みかんやいよかんなどが挙げられます。観光プロモーションのサイトはいよかんにちなみ、「いよ観ネット」と名付けられています。
いよ観ネットでは、愛媛の旅で使えるお得なチケット体験プランの予約が可能です。松山城と坂の上の雲ミュージアムがセットになった「松山城スペシャルパック」のほか、各種ものづくり・サイクリング・アクティビティのプランを取り揃えています。
また一般社団法人愛媛県観光物産協会は、物産・観光情報の発信と販路拡大をおこなっています。2023年5月には、観光プロモーションを目的とした旅行会社等との商談会を東京で開催しました。
高知県は明治維新で活躍した坂本龍馬のゆかりの地として知られています。ほかにも桂浜や仁淀ブルーとも呼ばれている「仁淀川」・最後の清流「四万十川」など自然豊かな観光名所の多い地域です。
高知市では坂本龍馬のふるさととして、土佐弁の観光ガイドとともに高知を歩く「龍馬の生まれたまち歩き~土佐っ歩(とさっぽ)」を実施しています。坂本龍馬が生まれ育った土佐の風土や歴史・文化に触れながら歩くツアーです。
また、高知で誕生した「よさこい祭り」は国内外に広まり、国内約 200 か所、海外29国・
地域で踊られる世界的な祭りへと成長しました(※4)。「よさこいアンバサダー」制度を開始し、よさこいの世界への展開とプロモーション活動を実施しています。
※4)自治体国際化協会 世界に広がるよさこい
中国・四国地方の自治体では、2025年の大阪・関西万博を見据えて広域連携を強化したプロモーション活動が増えています。訪日外国人の誘客には、取り組んでいる内容の周知や広告配信などによる認知度向上が必要です。
ここでは、日本国内や海外に向けて観光プロモーションを強化していくための、広告配信に適したプラットフォーム「まちあげ」についてご紹介します。
自治体でおこなう観光プロモーションをPRするには、ターゲット層を絞り込んだ広告配信が有効です。「まちあげ」では、自治体の目的に応じてターゲットを設定できるのが特徴です。
「まちあげ」では、広告に対しどのような方が興味を持ったのかを、分析レポートで可視化できます。配信した広告に興味や関心を示した方が実際にどの程度来訪したのかを計測し、推定される消費額を算出することも可能です。
さらに、アンケートオプションを活用することで、広告に対しどの程度興味や関心を抱いたのかや、観光意欲が高まったかなどの数値も可視化できます。広告配信の効果がわかりやすいのも「まちあげ」の特徴です。
中国・四国地方では、長年海路を活用した交流がおこなわれてきました。豊富な観光資源を活用したプロモーションも活発で、国際的なイベントも開催されています。
観光庁に登録されている広域連携DMO10件のうち、中国・四国地方で3つの法人が登録されています。2025年の関西・大阪万博の開催を見据えて、関西のDMO組織と連携し、「Greater WEST JAPAN(西日本広域周遊観光)」を目指すことも決定しました。
訪日外国人の誘客を目指し世界にアピールしていくには、現在取り組んでいる施策の周知を図り、広告配信などによって認知度を高める必要があります。「まちあげ」では訴求したいユーザー層に向けてターゲットを絞り込んだ広告配信が可能です。観光プロモーションによる認知度向上を目指す代理店のご担当者は「まちあげ」の活用をご検討ください。