自治体向け:訪日インバウンドにおける富裕層を集客するメリット・課題と集客成功のポイント

2023年の訪日外国人旅行者数は、2019年の約8割の水準まで回復しました(※1)。さらなるインバウンドの増加と消費拡大のためにも、より旅行消費単価の高い富裕層の集客を図る自治体も多いのではないでしょうか。

 

富裕層を集客するには、彼らが求める高付加価値なサービスが必要です。また、富裕層に向けたSNSやインバウンドメディアでの情報発信のほか、海外インフルエンサーの起用などを含めたマーケティング戦略が重要になってきます。

 

本記事では、訪日インバウンドにおける富裕層の特徴・集客の課題・集客ツールや集客を成功に導くポイントについて解説します。また、自治体やDMOによる富裕層集客を図る具体的な取り組みや成功事例についても記載しているので、参考にしてください。

 

記事の後半には、インバウンドのプロモーションに活用できるサービス「インバウンドでまちあげ」をご紹介しています。インバウンド富裕層の誘客・プロモーションを検討している自治体や代理店のご担当者は、ぜひ最後までご覧ください。

 

※1)日本政府観光局 訪日外客数(2023年12月および年間推計値)

 

目次を表示

  1.  訪日インバウンドにおける富裕層の特徴
     1.1 インバウンドにおける富裕層とは?
     1.2 インバウンドにおける富裕層のタイプ

  2.  インバウンド富裕層を集客するメリット
     2.1 旅行消費単価が高い
     2.2 インバウンド需要全体に波及効果がある 2.3 地域経済が活性化する

  3.  インバウンド集客における課題
     3.1 観光DXの遅れ
     3.2 受け入れ体制が不十分
     3.3 人材の不足

  4.  インバウンド富裕層の集客ツール
     4.1 SNS
     4.2 インバウンドメディア
     4.3 海外インフルエンサー

  5.  インバウンド富裕層の集客を成功に導くポイント
     5.1 多言語対応
     5.2 付加価値の高いコンテンツを提供する
      5.2.1 コアバリュー
      5.2.2 バリュー提供
      5.2.3 商品性

  6.  インバウンド富裕層集客の成功事例
     6.1 長崎県|平戸城の城泊
     6.2 熊野古道
     6.3 富山県|水と匠

  7.  インバウンド集客をサポートする「インバウンドでまちあげ」とは

  8.  まとめ


1.訪日インバウンドにおける富裕層の特徴


そもそも、富裕層とは具体的にどういった層を指すのでしょうか。インバウンドにおける富裕層の定義に加えて、旅行市場における位置付けや特徴について解説します。

 

 

1.1 インバウンドにおける富裕層とは?



インバウンドにおける富裕層

 

日本政府観光局(JNTO)では、「旅行先における消費額が100万円以上/人回」の旅行者をインバウンドにおける富裕層と定義しています。


欧米豪(アメリカ・イギリス・ドイツ・フランス・オーストラリア)および中国の6ヶ国のインバウンド富裕層は訪日旅行者数全体のうち約1.0%です。この1%の富裕旅行者で訪日外国人旅行消費額の約11.5%を占めています(※2)。


しかしながら、日本は他国と比べて高付加価値旅行市場の獲得シェアが低い水準にとどまっています。例えば、米国富裕層の訪問先シェアで日本は1.8%の13 位です 。英国富裕層の訪問先シェアは 0.4%の36 位に過ぎません(※3)。


※2,3)国土交通省 観光庁 地方における高付加価値な インバウンド観光地づくりに向けた アクションプランプラン

 

1.2 インバウンドにおける富裕層のタイプ



インバウンド富裕層は、大きくClassic Luxury志向(従来型)とModern Luxury志向(新型)の2種類に分類されます。


Classic Luxury志向は、「快適さ」「サービスの質」「ステータス」など富や権力を重要視する価値観を持っているのが特徴です。Modern Luxury志向は、ある特定の分野に対しては強い興味や関心を持つものの、それ以外にはあまりお金を使わない傾向があります。


また、富裕旅行者の消費性向(旅行タイプ)も多様化しており、「オールラグジュアリー」と「セレクティブラグジュアリー」の2タイプが存在します。


オールラグジュアリーは、あらゆるコト・モノに対して高級感を求め、高額消費をおこなうタイプです。セレクティブラグジュアリーは、自分にとって価値を感じるものから優先的に投資する傾向があります。例えば、「日本のお城に興味があるので貸切にして鑑賞したい」一方で、「ホテルは寝るだけなのでこだわらない」といったタイプです。

 


2.インバウンド富裕層を集客するメリット


本章では、インバウンド富裕層にターゲットを絞って集客するメリットについて解説します。

 

2.1 旅行消費単価が高い



まず、インバウンド富裕層は消費金額が大きく、一人あたりの単価が高い点がメリットとして挙げられます。


JNTOの調査によると、欧米豪の5市場の富裕旅行者が、日本に限らず海外旅行で消費する一人当たりの平均単価は約136万円です(※4)。これは、訪日外国人旅行者全体の消費額の平均単価21.8万円の約6倍に相当します(※5)。


※4)日本政府観光局 富裕旅行市場に向けた取組について 

※5)国土交通省 観光庁 2023年10-12月期の全国調査結果(1次速報)の概要



2.2 インバウンド需要全体に波及効果がある



インバウンド富裕層が多く訪れる地域の情報は、SNSなどの口コミを通じて拡散されます。特に、富裕層に認められたブランドやトレンドは大衆層の憧れを生みやすい傾向があります。


インバウンド富裕層へのアプローチが、インバウンド需要全体への波及効果が見込める点は大きなメリットといえるでしょう。



2.3 地域経済が活性化する



インバウンド富裕層の集客は、地域経済の活性化にもつながります。

この層の利用金額シェアは、東京都が67.2%で大阪府が18.1%と大都市圏での消費が大半を占めています(※6)。


地域の魅力を効果的に訴求して集客を増やすことができれば、消費が拡大して地域経済の活性化につながるでしょう。また、それにともなって地域の雇用確保・所得増加も期待できます。


※6)国土交通省 観光庁 地方における高付加価値な インバウンド観光地づくりに向けた アクションプラン 参考資料

 


3.インバウンド集客における課題

 

 

上述したように、日本は他国と比べてインバウンド富裕層の獲得シェアが低い水準にとどまっています。インバウンド富裕層の誘客促進を図るには、自治体が抱えている様々な課題の解決が急務です。



3.1 観光DXの遅れ



国内における観光業の課題の一つが、デジタル化の遅れです。例えば、FAXや紙で予約ならびに顧客管理をおこなっている宿泊施設が依然として見受けられます。また、旅行代理店やOTAに頼る宿泊施設が多いのも課題です。直販が増えれば手数料を抑えられて、利益増加が見込めます。


しかしながら、資金不足で必要な投資ができないなどの理由で、デジタル化が進んでいないのが実情です。さらに、直販を増やすために必要なデータに基づく分析を担う人材育成も進んでいません。



3.2 受け入れ体制が不十分



富裕層のニーズに応える体制が整っていないのも、課題の一つです。例えば、富裕層が求める高級車の手配・施設の貸し切りや時間外対応が可能なコンテンツ提供などへのフレキシブルな対応が十分ではありません。


そのほか、ハラールやヴィーガンなどの多様な食事提供を含めた富裕層旅行者一人ひとりに最適なプランを提供できる体制づくりも求められます。加えて、高付加価値を提供できる高級宿泊施設の開発・拡充も必要になってくるでしょう。


通信環境や交通インフラの整備も重要です。訪日外国人向け多言語旅行情報サイト「GOOD LUCK TRIP」の調査では、外国人旅行者が訪日中に最も不便に感じることの第1位が「Wi-Fi環境(31.5%)」でした(※7)。交通インフラに関しては、「乗るべき列車の種類や料金体系がわかりにくかった」と答えた外国人の割合が25%にのぼります(※8)。


※7)PR TIMES 訪日外国人が「日本で不便に思うこと」のランキング。「地球の歩き方」が展開する訪日旅行情報サイト「GOOD LUCK TRIP」が発表。

※8)日本政策投資銀行 DBJ・JTBFアジア・欧米豪訪日外国人旅行者の意向調査2023年度版



3.3 人材の不足



人材不足の解消も喫緊の課題です。

特に、高付加価値な観光地づくりや誘客に必要な知見・ネットワークを持った人材が不足しています。具体的には、インバウンド富裕層の顧客満足度を高められる優れたガイド(ランドオペレーター)や、ホスピタリティの高い人材(コンシェルジュ)などです。


育成が遅れている要因はノウハウを教える人がいないなど様々ですが、知識やスキル向上のための研修を実施するなどの対策を講じる必要があります。

 


4.インバウンド富裕層の集客ツール

 

 

続いて、インバウンド富裕層を集客するうえで、効果が期待できる3つの方法についてみていきましょう。



4.1 SNS



地方自治体が訪日観光客誘致の目的で実施するWebプロモーションとしても挙げたのは、「SNSの公式アカウント運用」が最も多く35%(※9)。また、日本政府観光局の訪日旅行データハンドブック2023年によると、 外国人が訪日旅行前に役立った旅行情報源はSNSが29.9%、個人のブログが27.4%です(※10)。


これらの結果からも、観光地の魅力をより広範に伝えるには、画像や動画によるSNS発信が有効だと考えられます。情報発信の際に「#travel」「#japantrip」などのハッシュタグを付けて投稿すると、より高い効果が期待できるでしょう。


※9)PR TIMES 【アンケート調査】 全国の300自治体を対象に、訪日外国人観光客の誘致を目的としたWebプロモーションの課題とニーズを調査

※10)国交通省 観光庁 訪日外国人の消費動向    訪日外国人消費動向調査結果及び分析 2023 年 1-3 月期 報告書



4.2 インバウンドメディア



富裕層の旅行客に向けて、情報サイトや雑誌・ガイドブックなどに情報を掲載する方法もあります。

代表的なインバウンドメディアとして挙げられるのが、日本政府観光局が運営する総合観光サイトの「JNTO」です。政府機関が運営主体であるため、信頼性と情報の網羅性に優れています。また、グローバルサイトは英語を始め、スペイン語や中国語など15ヶ国語に対応しています。


4.3 海外インフルエンサー



世界各国にフォロワーを持ち、富裕層に影響力のある海外のインフルエンサーにPRを依頼するのも一手です。知名度の高いインフルエンサーを現地のアンバサダーとして起用すれば、地域の魅力を訴求する材料となって高いPR効果が期待できます。


ただし、インフルエンサーに依頼する場合は、プロモーションの目的に合致した人選を意識しなければいけません。訴求目的やターゲットとミスマッチな依頼をしても、かえってイメージダウンになる可能性もあるので注意が必要です。

 


5.インバウンド富裕層の集客を成功に導くポイント


上述したインバウンド富裕層の集客方法を踏まえたうえで、集客を成功に導くために押さえておくべきポイントを解説します。

 

5.1 多言語対応



Webサイトや広告の多言語化などの対応は、インバウンド集客を図るうえで必須といえるでしょう。加えて、多言語対応可能なスタッフの配置・音声翻訳ツールの導入や各種資料の翻訳などをおこなう必要があります。


キャッシュレス対応も重要なポイントです。2022年の経産省の資料によると、国内のキャッシュレス決済比率が約30%なのに対して、海外の主要各国の決済比率は40〜60%台です(※11)。現金決済にしか対応していないと、富裕層集客の機会損失につながりかねません。


※11)経済産業省 キャッシュレス更なる普及促進に 向けた方向性



5.2 付加価値の高いコンテンツを提供する



JNTOでは、インバウンド富裕層向けコンテンツを評価する3つの指標を設定しています。富裕旅行者向けのコンテンツでは、より高度な価値・プラスアルファのサービス・商品の差別化という3つの要素が重要です。

 

5.2.1 コアバリュー


コアバリューとは、核となる価値を指します。そもそも、コンテンツ自体に価値がないと富裕層に魅力を感じてもらえません。その地域でしかできない体験や食べられないものなど、差別化を図れる価値の提供が不可欠です。


5.2.2 バリュー提供


富裕層には、コアバリュー提供の際に工夫が必要です。一般観光客向けのガイドや説明だけではなく、例えばその道のプロや人間国宝の方から直接指導してもらうといった特別な対応が求められます。


要求する水準が高い富裕旅行者のニーズに応える体制づくりも重要です。例えば、夜間貸し切りや普段は立ち入り禁止の観光スポットを探訪したいといった要望にも、フレキシブルに対応できる体制が求められます。

 

5.2.3 商品性

 

富裕層の特徴として、価値に見合った金額であれば支払いを厭わない傾向があります。それゆえ、希少価値の高さという要素は非常に重要です。また、世界遺産や人間国宝など公的に認定・評価が与えられており、一定の価値が担保されている点も大きな差別化要素となります。

 

 

6.インバウンド富裕層集客の成功事例

 


インバウンド富裕層のニーズをつかみ、実際に成果をあげている自治体もあります。ここでは、自治体のインバウンド富裕層集客の成功事例をご紹介します。

 

6.1 長崎県|平戸城の城泊



長崎県の平戸市は日本100名城に数えられる平戸城の一部を宿泊施設化して、1泊約60万円で宿泊できる「平戸城CASTLE STAY懐柔櫓」を2021年にオープンしました(※12)。事業の発端は、2017年におこなった1日1組限定の無料宿泊イベントです。このときは、国内外からおよそ7,500組もの応募が殺到しました(※13)。


城の内部は、日本の伝統美と現代美術を融合させた豪華な内装になっており、贅沢な空間を味わえると富裕旅行者に好評です。また、武家茶道体験や国の指定重要無形民俗文化財である平戸神楽の鑑賞などのプログラムも用意されています。


そのほか、平戸の食・歴史・アート・文化などを体験できる様々なオプションがあり、カスタマイズできるようになっているのも魅力です。


※12)STAY JAPAN 日本初!常設の日本100名城に泊まる体験「平戸城CASTLE STAY懐柔櫓」美食プラン

※13)PR TIMES 【日本初!常設の「城泊」施設が2020年夏、ついに登場】長崎県平戸市、百戦錬磨グループ、アトリエ・天工人、JALが協定締結



6.2 熊野古道



和歌山県の熊野三山へ通じる参詣道「熊野古道」は世界遺産にも認定されており、外国人観光客にも人気のスポットとして知られています。【東海地方版】DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査 (2022年度版)によると、熊野古道を訪れる欧米豪の旅行者の約半数が高収入層です(※14)。


体験に重点を置いたModern Luxury志向の富裕旅行者から好評を得ており、1泊3.5万円以上の高単価ツアーなども組まれています。


古道沿いに、地域ならではの食や歴史などを楽しめるコンテンツが充実しているのもポイントです。また、周辺の宿泊施設は客室10室以下の小規模な民宿が大半で、地域住民と直接触れ合う深い体験ができるのも魅力です。


※14)日本政策投資銀行 【東海地方版】DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査 (2022年度版)



6.3 富山県|水と匠



富山県|水と匠

 

富山県西部の広域連携DMOである富山西部観光社「水と匠」では、地域を代表する勝興寺・国泰寺・瑞龍寺の3つのお寺を巡る体験ツアーを提供しています。主に、特定分野に関心を寄せるModern Luxury志向の富裕旅行者をターゲットにしているのが特徴です。


尺八を用いた法要や精進料理に加えて、坐禅・茶道・雅楽など様々な体験コンテンツを用意し、高付加価値な旅を提供しています。普段は観光客に非公開の特別な部屋への案内など、富裕旅行者の要望に応えられる体制が整えているのもポイントです。


さらに、伝統的な民家「アズマダチ」を活用した宿泊施設「楽土庵」での宿泊や、寺院参拝を組み合わせたツアー提供もおこなっています。そのほか、地域でしか手に入らない食や工芸品の販売など、付加価値の高い観光地づくりに取り組んでいます。

 


7.インバウンド集客をサポートする「インバウンドでまちあげ」とは

 

 

インバウンドでまちあげ

「インバウンドでまちあげ」は、訪日外国人観光客の誘客を支援するインバウンドプロモーションサービスです。香港・台湾の女性向け日本情報メディア「Japaholic(ジャパホリック)」を活用して、訪日旅行を検討している方へ地域の魅力を届けられます。


「Japaholic」は、20万人のFacebookフォロワーならびに2.5万人のInstagramフォロワーを誇り、SNSでの発信力が強みです。また、GoogleやYouTubeなどの運用型広告のほか、インフルエンサーやメディアとのタイアップなど幅広い施策を実施できるツールです。


加えて、「インバウンドまちあげ」はプロモーションの効果測定が可能です。位置情報データを活用し、自治体の情報を閲覧した方が実際に県や市にどれくらい来訪したのかを計測できます。来訪者の想定消費額を算出したレポート提供も受けられるので、費用対効果を可視化できるのが特徴です。

 


8.まとめ

 

 

訪日インバウンド需要が回復している昨今、旅行消費単価の高い富裕層を集客したいと考えている自治体は多いでしょう。受け入れ体制の不備や人材不足などの課題もありますが、重要なのは富裕層が求めているニーズの把握です。


オールラグジュアリー志向・セレクティブラグジュアリー志向など、富裕層の中でもニーズは多様化しています。どの層にどのような手法でアプローチすればよいかという点を押さえておけば、自ずと地域の集客に必要な施策も見えてくるでしょう。


自治体のニーズや課題に合わせて広告配信できる「インバウンドでまちあげ」は、インバウンド富裕層への効率的なアプローチが可能です。この機会にご利用を検討されてはいかがでしょうか。

 

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