関係人口の創出で移住促進を図る自治体のメリット・課題と取り組み事例
まちあげパン太
まちあげの紹介から、WEBマーケティングに携わる方向けに、Web広告に関わる幅広いコンテンツをお届けします。
少子高齢化による人口減少という課題を抱える地方自治体にとって、地域の担い手として活躍が期待される関係人口は大変重要な存在です。関係人口創出に向けて地域の魅力を伝えるメディアが増えるなか、各自治体も広告を打つなど様々な工夫をおこなっています。しかしながら、成果につなげている自治体はまだまだ少ないのが現状です。
本記事では、新しい概念である「関係人口」について、その定義と関係人口創出のメリット・課題について解説。さらに、関係人口の創出から移住・定住へ向けて取り組むべきステップおよび関係人口創出に向けて取り組む自治体の事例をご紹介します。
地域活性化において、具体的にどのような施策を立てたらよいかお悩みの自治体のご担当者は、参考にしてください。記事の後半では、マイクロアドが提供する自治体に特化した広告配信サービス「まちあげ」をご紹介しています。ぜひ最後までご覧ください。
目次を表示
- 関係人口とは
1.1 関係人口
1.2 交流人口
1.3 定住人口
1.4 3者の違いについて - 関係人口を創出するメリット
2.1 将来における移住者の増加
2.2 地域における経済活動の活性化
2.3 新たな価値を得られる - 関係人口創出のための取り組みと移住・定住までの4ステップ
3.1 移住・定住に関心を持つ方々へのPR
3.2 移住・定住について情報収集を始めた方々への情報提供
3.3 移住・定住を具体的に計画し始めた方々へのサポート
3.4 移住・定住の決断に向けたサポート - 関係人口創出と拡大に向けた課題
4.1 取り組みの成果や効果が明確ではない
4.2 財源や人手が不足している
4.3 対象者のニーズ把握と情報発信が不可欠 - 関係人口創出への取り組み事例
5.1 香川県三木町
5.2 北海道上士幌町
5.3 島根県邑南町
5.4 【福井県】福井市・鯖江市・美浜町・若狭町
5.41 福井市
5.42 鯖江市
5.43 美浜町
5.44 若狭町 - まちの魅力を伝える広告配信サービス「まちあげ」
- まとめ
近年、耳にする機会が増えた「関係人口」という言葉の意味をご存知でしょうか。本章では、「関係人口」の定義や、似た言葉である「交流人口」「定住人口」との違いについて解説します。
1.1 関係人口
関係人口とは、実際には居住していないにも関わらず、特定の地域に継続的に多様な形で関わる方々を指す言葉です。
例えば、地域で開催されるイベントの参加者やふるさと納税の寄付者などが該当します。自身の副業や兼業と地域での活動を関連付けるほか、地域のイベントに積極的に参加したりふるさと納税で支援をしたりと、その形態は様々です。
関係人口は、地域の経済活動やコミュニティの活性化に貢献する大切な存在といえます。
1.2 交流人口
交流人口とは、地域外から通勤・通学・観光やレジャー等で訪れる人々を指す言葉です。その地域との結びつきやつながりは強くありませんが、地域経済に直接大きな影響を与えます。
1.3 定住人口
定住人口とは、実際にその地域に住んでいる方々を指す言葉です。昔からその地に居住している方も、移住して住むようになった方も定住人口として位置づけられます。一般的に「地域住民」と呼ばれますが、地域が今後発展を続けるために不可欠な存在です。
定住人口は、地域のコミュニティの基盤であり、安定した日常生活の維持や地域文化の継承に重要な役割を果たします。
1.4 3者の違いについて
関係人口・交流人口・定住人口の違いは、地域との関わり方とその期間にあります。
「関係人口」は総務省の定義で、以下のように区分されています(※1)。
- ・行き来する人(風の人)
- ・地域内にルーツがある者(近居・遠居)
- ・地域に何らかの関わりがある者(過去の勤務や居住、滞在等)
定住と地域活性化の両立を実現するのは容易ではありません。定住の実現を必ずしも前提とするのではなく、新たな風を起こしてその風を運び、最後は地域を去っていってもよいという人材を「風の人」と呼びます。
「交流人口」は一時的に地域に滞在したりつながりを持つ方々、「定住人口」は地域に居住して長期的に地域とのつながりを持ち続ける方々です。
それぞれが地域に与える影響は異なりますが、地域活性化にとって、どれも重要な役割を果たしています。特に「関係人口」は、地域力の創造ならびに地方の再生に不可欠な存在として期待されています。
※1)総務省「関係人口」ポータルサイト 関係人口とは
関係人口の創出は、新たなビジネスチャンスを増やす可能性を持っています。ここでは、関係人口の創出がもたらず具体的なメリットについて解説します。
2.1 将来における移住者の増加
ブランド総合研究所の「第3回関係人口の意識調査2023」によると、関係人口のおよそ20%に移住意欲があるという結果が出ています。
当初は移住する気が無かった方も、関係人口として地域に関わりをを持って何度も訪れるうちに、地域の魅力を深く理解するようになります。
2.2 地域における経済活動の活性化
特定の地域に関心を持った方々は、その地域を応援するために地域との関わりが強まったり地域と居住地を行き来する機会を増やしたりすると考えられます。したがって、関係人口が増えると、地域での経済活動の増加が見込めます。
具体的に該当する経済活動は、都度発生する旅費・食費に加えて、観光・イベントへの参加や地元産品の購入などです。その結果、地元の商店やサービス業が潤い、経済全体の活性化につながります。
2.3 新たな価値を得られる
関係人口を構成する方々は、日本全国様々な場所で生活しています。その経験や思考は多種多様です。そして、彼らの持つ外部からの視点やアイデアは、地域の課題解決に役立つ可能性があります。
具体的には、応援したい地域でスキルを活かすことで、人材・技術・情報の各分野での充実への貢献が期待できます。
また、多様な背景を持つ人々との交流は地域住民にとって新たな刺激となり、コミュニティの活性化につながるでしょう。
自治体は関係人口の創出を図り、最終的に移住・定住につなげる取り組みを推進しています。ここでは、そのための4つのステップを解説します。
3.1 移住・定住に関心を持つ方々へのPR
まずは、地域の魅力を地域外の方々に発信するPRが不可欠です。その際、闇雲に情報発信をおこなうのではなく、地域への移住・定住に関心を持つ方々にターゲットを絞る必要があります。
代表的なPR手法としては、SNSやWebサイトを活用した情報発信のほか、都市部における観光イベントの開催などが挙げられます。
3.2 移住・定住について情報収集を始めた方々への情報提供
次に、移住や定住に関心を持って情報収集を始めた方々に対して、具体的な情報を提供します。以下に例を挙げます。
- ・地域の生活環境や仕事情報を詳しく紹介するWebサイトを構築する
- ・移住希望者向けのセミナーや説明会を開催し、参加者の質問に答える機会を設ける
地域への関心をさらに深めてもらうために、様々な方法で対象者にアプローチしましょう。
3.3 移住・定住を具体的に計画し始めた方々へのサポート
実際に移住・定住を計画し始めた方々には、地域での生活に即した以下のようなサポートが必要です。
- ・地域での生活を実体験できる「お試し移住プログラム」の提供
- ・移住希望者と地域住民との交流イベントを開催し、リアルな声を聞く場を設ける
移り住んだ後の生活を具体的にイメージしてもらえると、さらにその地域への親しみを感じて移住・定住を実行に移す可能性が高まるでしょう。
3.4 移住・定住の決断に向けたサポート
最後に、移住・定住の決断を後押しするために、以下のようなサポートを提供しましょう。
- ・移住・定住に関する手続きのサポートや住宅探しのサポートをおこなう
- ・就職・子どもの学校選択など、生活全般に関する相談に対応する
これらのサポートによって移住希望者の不安を軽減し、移住・定住希望者が決断するための大きな後押しとなります。
全国の自治体を対象に実施したアンケート等から、関係人口の創出と拡大を図るうえでの課題が浮き彫りになっています。以下、具体的に解説します。
4.1 取り組みの成果や効果が明確ではない
関係人口創出の取り組みは、成果や効果が見えにくいのが課題です。全国の自治体を対象におこなったアンケートで、「取り組みの成果・効果が明確でない」と答えた自治体は半数を超えました(※2)。
地域のありたい姿を実現できたかどうかや、中長期的な取り組みの効果を定量的に評価する指標を設定し、定期的に見直すことが重要です。指標の例として、以下が挙げられます。
- ・ふるさと納税の件数や金額
- ・観光入込客数
- ・移住定住者数
- ・移住体験プログラムやイベント等の参加人数
- ・SNSフォロワー数やHPアクセス数
これらの指標によって取り組みの成果が明確になると、関係人口創出を図る自治体が増えていくと考えられます。
※2)大正大学 地域構想研究所 主任研究員 中島 ゆき 氏
自治体における「関係人口」取組みの現状と課題 ―“熱狂的ファン戦略”モデルの一考察―
4.2 財源や人手が不足している
関係人口創出には多くの財源・人手が必要です。しかしながら、実際にはこれらの資源が不足しているケースが多く見られます。
全国の自治体を対象におこなったアンケートで「財源不足」「人手不足」と答えた自治体は1671自治体にのぼりました(※3)。
財源不足に対しては、ふるさと納税の有効活用やクラウドファンディング・寄付の促進といった対策方法が考えられます。人手不足に対しては、地域内の企業への働きかけや自治体内の部署連携の強化が必要です。さらに、ボランティアの活用も検討すべき課題といえるでしょう。
※3)内閣官房・内閣府総合サイト「地方創生」
令和5年度 関係人口の創出・拡大に向けた取組状況調査(概要)
4.3 対象者のニーズ把握と情報発信が不可欠
関係人口の創出には、対象者のニーズの正確な把握ならびに適切な情報発信が不可欠です。しかしながら、全国の自治体を対象におこなったアンケートでは、対象者のニーズが不明と答えた自治体が25%以上という結果が出ています(※4)。
その対策としては、将来関係人口になると期待されるターゲット層に向けて、カスタマイズされた情報発信が求められます。加えて、フィードバックの収集と有効活用が欠かせません。
そのためにも、地域に興味・関心を持つ方々が地域と交流できる拠点を確保したり、両者のつなぎ役になれる人材・組織が必要です。
※4)大正大学 地域構想研究所 主任研究員 中島 ゆき 氏
自治体における「関係人口」取組みの現状と課題 ―“熱狂的ファン戦略”モデルの一考察―
関係人口の創出に積極的に取り組み、成果を上げている自治体も数多くあります。以下、各自治体の具体的な取り組みをご紹介します。
5.1 香川県三木町
三木町で2017年3月からスタートした「ふるさと住民票」は、町外に住んでいる方と地域住民との交流を促進するための新しい取り組みです。対象者は、三木町出身者や在勤・在学している方のほか、ふるさと納税をされた方などとなっています。
主な取り組みは、町のシンボルをデザインした「ふるさと住民カード」や年2回のふるさと会報誌の発行のほか、「三木町おもしろ体験」ツアーへのご招待などです。
また、2024年4月現在で3名の地域おこし協力隊を受け入れ、さらに新たなメンバーを募集しています。
5.2 北海道上士幌町
上士幌町では、クラウドファンディング型ふるさと納税によって継続的に寄付者を募り、首都圏で開催される交流イベントに招待。寄付者の中から移住体験モニターを募集し、滞在期間中は「生涯活躍かみしほろ塾」にスタッフとして参加してもらう取り組みをおこなっています。
これらの取り組みのフィードバック収集として、以下のような応援人口実態調査を実施。
- ・イベント参加者や移住体験モニターへのヒアリング
- ・直近2年の寄付者メーリングリストへアンケート調査
「さまざまな形で上士幌町に関わってもらえる、応援人口を増やしたい」という町の思いを実現するため、調査結果を有効活用しています。
5.3 島根県邑南町
邑南町では、地域資源を活用した観光プログラムおよび住民との協働によって、関係人口の増加を図っています。
人口の減少によって惜しまれつつ廃線となったJR三江線跡地を、新たな地域資源としてとらえました。廃線決定後、「鉄道ファン」の乗客が急増したことで、「地域住民」と互いに地域課題を解決する新たな「交流事業」を創出しています。
5.4 【福井県】福井市・鯖江市・美浜町・若狭町
福井県は、多くの民間調査において「幸福度日本一」と評価される暮らしやすい地域でありながら、人口流出という課題も抱えています。そこで、課題解決のために複数の市町が連携し、関係人口の創出に取り組んでいます。
外から福井を応援してもらう「ふるさと県民」のネットワークづくりを展開。ここでは、4市町村のローカルプロジェクトをご紹介します。
5.41 福井市
福井市は、北陸新幹線の開業に合わせて再開発事業が進む一方で、空き店舗や老朽化ビルの建替えが進まないという課題を抱えていました。
そこで、2015年からリノベーションスクールを開催し、12件のリノベーションを事業化。リノベーションによって商店街の空き店舗を生まれ変わらせるなど、福井の魅力づくりに取り組んでいます。
5.42 鯖江市
鯖江市には、特産である眼鏡産業など高い技術力を誇るものづくり企業が集まっています。そんな鯖江市では、ものづくり企業の魅力を発信するためのWebサイト「さばえの仕事図鑑」を開設し、各社の企業情報や社員へのインタビューなどを掲載しています。
また、掲載された企業を見学するバスツアー「鯖江"育職住"ツアー」が、これまで2回開催されました。
5.43 美浜町
美浜町は、少子高齢化による人口減少とともに空き家の増加という課題を抱えています。そこで、空き家を利用した移住居住体験施設を整備し、体験を希望する方の受け入れを積極的に進めています。
また、町の魅力を最大限PRするために、都市部と美浜を行き来するクリエイターをアドバイザーに迎えました。クリエイターの創作活動を通じて発信する取り組み「クリエイターinレジデンス」が進められています。
5.44 若狭町
若狭町は、農業や漁業などの町の基幹産業の衰退が課題です。課題解決のために、地域の方々と共に地域資源を活かした新たな「なりわい」づくりに協力してくれる人材を募集。1泊2日×年6回のビジネスカレッジを開講し、フィールドワークやワークショップを通じて、地域の課題や魅力を調査・分析しています。
マイクロアドが提供する「まちあげ」は、まだ知られていない地域の魅力を広告を通じて効果的に届けるサービスです。
自治体の取り組みに興味・関心を持つ方々へのターゲットを絞った広告配信により、自治体のデジタルプロモーションに貢献できます。2022年10月のサービスリリース以降、導入自治体数は順調に増加しており、現在までに累計導入自治体数は200以上にのぼります。
「まちあげ」のメリットは、ターゲットを絞った広告配信が可能な点です。連携している位置情報データや様々なメディアの閲覧データを独自に分析し、地域のニーズに合わせたターゲティングで広告効果を最大限引き出します。
さらに、広告の配信結果を分析して自治体向けに分析レポートを提供。数値レポートだけでなく、「広告を見た人がその地域に訪れたか」「その地域に対してどのようなイメージを持ったか」などのアンケート調査も実施できます。
過疎や少子高齢化による人口減少が進む自治体にとって、関係人口の創出・拡大は喫緊の課題です。関係人口は、地域活性化の担い手として重要な役割を果たし、地域の持続可能な発展に貢献する可能性を有しています。
本記事では、関係人口を創出するメリットや関係人口の創出・拡大に向けて自治体が抱えている課題に加えて、定住・移住までのステップについて解説しました。さらに、積極的な取り組みで成果をあげている自治体の具体的な事例をご紹介しました。
記事の後半で扱った「まちあげ」は、データ分析に基づいたターゲティングで自治体のニーズに合った広告配信が可能なサービスです。地域の魅力を全国に伝える「まちあげ」の利用を、ぜひご検討ください。